2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「世界」を読むツール

――マルクス主義や共産党の信者さんたちは「マルクス主義は全体的な世界観である。一部分だけ切り取って、都合のいいところだけ受け入れるなんてダメだ」というわけです。でも、私はキリスト教の信者だけど、マルクス主義の信者じゃありませんからね。乱暴な…

よみがえる縄文

列島創世記(日本の歴史 第1巻)/松木武彦 「認知考古学」という視点から、日本列島にヒトが初めて登場した4万年前(旧石器時代)から縄文時代、弥生時代を経て、世界的にも類を見ない大規模な古墳が集中的につくられる古墳時代に及ぶ列島の歴史を叙述す…

W・G・ゼーバルト 『アウステルリッツ』

60年代後半 イギリスからベルギーへの旅を繰り返す「私」 アントワープ中央駅の待合室 建築史家・アウステルリッツとの出会い ――会った当初から私を驚嘆させたのは、アウステルリッツがこうした思索を話をしながら纏め、いわばとりとめのない思いつきからこ…

行為としての読書

「どこへ行っても、人は自分を発見します。同じように、どんな本を読んでも、人はみな自分をその中に発見するのです」(加藤周一『読書術』) 1980年代、ロラン・バルトやジュリア・クリステヴァら構造主義系と目される文学理論家が日本でも一斉に紹介され、…

高橋昌一郎 『理性の限界』

「理性の限界」とは何か 個人のみならず、組織や社会における合意的意思決定は、いかにして導かれるのか 完全に民主的な社会的決定方式が存在しない(ケネス・アロウの「不可能性定理」) 究極の限界値(陸上100mは9秒37) ヒト遺伝子そのものが生物学的に変…

中沢新一 『アースダイバー』

9.11のあの出来事があって以来、一神教の本質について考えることが多くなっていた。その宗教は、グローバリズムの見えない背骨をつくっている。一神教という宗教がなければ、おそらく資本主義というシステムは、いまあるような形をとって発達はしなかっただ…

小室直樹 『数学嫌いな人のための数学』

扉に「数学とは神の論理なり」とあるように、数学の論理とは古代イスラエルの宗教、すなわち絶対的唯一神との契約の思想から派生したものであり、その精神がアリストテレスの形式論理学やヨーロッパ近代の国際法、あるいは近代資本主義の精神を誕生させたこ…

永遠に再開されない審理

オバマ大統領、グアンタナモ収容所の閉鎖命令に署名 (www.asahi.com 2009年1月23日1時24分) オバマ米大統領は22日、キューバ・グアンタナモ米軍基地にブッシュ前政権が設置した対テロ戦収容所について、1年以内に閉鎖することを命ずる大統領令に署名し…

知られざるゴヤ

ART

ゴヤの「巨人」、実は弟子の作品 プラド美術館近く公表(www.asahi.com 2009年1月22日3時1分) スペインを代表する画家フランシスコ・デ・ゴヤ(1746〜1828)の作品と見なされてきた絵画「巨人」が、実は他の画家の作品だったとする調査報告書を、所…

ルイ・マル 『鬼火』(1963)

Louis Malle LE FEU FOLLET 監督・脚本 ルイ・マル 原作 ピエール・ドリュー・ラ・ロシェル モーリス・ロネ(アラン・ルロワ) レナ・スケルラ(リディア) ベルナール・ノエル(デュブール) アレクサンドラ・スチュアルト(ソランジュ) ジャンヌ・モロー…

ブラック・ケネディ

オバマ氏、米大統領就任へ 日本時間21日午前2時宣誓 (www.asahi.com 2009年1月20日23時20分) 米民主党のバラク・オバマ前上院議員(47)は20日正午(日本時間21日午前2時)、ワシントンの連邦議会議事堂前での就任式で宣誓した後、第44代大統…

電子作家の肉筆

安部公房の手紙発見 埴谷雄高に「相変らず金缺病」(www.asahi.com 2009年1月18日3時2分) 十七回忌を22日に迎える作家、安部公房(1924〜93)の文壇デビューの頃の書簡が見つかった。作家の埴谷雄高(はにや・ゆたか、1909〜97)に、自作を売…

多極化世界を拒む隘路 ――パレスチナ 解決の糸口は

イスラエルが「停戦」宣言 ハマスも条件つきで (www.asahi.com 2009年1月18日23時21分 一部抜粋) イスラエルのオルメルト暫定首相は17日夜、イスラム過激派ハマスが支配するパレスチナ自治区ガザへの攻撃を18日午前2時(日本時間18日午前9時)から…

典型的な一日を破壊する「暴力」に抗する

有名私大の教授がキャンパス内で刺殺されるという痛ましい事件から4日が経つ。現時点で犯人は捕まっていないが、「犯人はT教授の行動パターンや現場の構造を把握したうえ、入念に準備して犯行に及んだ疑いが強い」(朝日新聞)とのこと。傷跡の多さから、被…

ミラン・クンデラ 『存在の耐えられない軽さ』

第1部 軽さと重さ 第2部 心と身体 第3部 理解されなかったことば 第4部 心と身体 第5部 軽さと重さ 第6部 大行進 第7部 カレーニンの微笑 非対称的な構造。 ニーチェ 永劫回帰という神話を逆に見れば、一度で消えてしまい、もどってくることのない人…

リービ英雄 『千々にくだけて』

昨日、第140回芥川賞・直木賞の受賞作品が発表されたが、直木賞の天童荒太はともかく、芥川賞(津村記久子、太宰治賞作家)の方は初めて聞く名前で、ぼく自身、いかに最近の文芸雑誌を読んでいないかを改めて思い知らされた。そう言えば、近年の芥川賞作家で…

ルイ=フェルディナン・セリーヌ 『夜の果てへの旅』

ジャン=ポール・サルトルがその小説『嘔吐』の扉に、「彼は社会的に重要な人間ではない。正真正銘の一個人である」という、セリーヌの戯曲『教会』の一節を引用しているのはあまりにも有名だ。「もし、ユダヤ人が存在しなければ、反ユダヤ主義は、ユダヤ人…

クロード・シモン 『三枚つづきの絵』

「絵葉書」の描写から、「絵葉書」の置かれている「空間」の描写へ… 徹底した「物」の記憶 谷間から部落のはずれへ 《イタ公》と子守女の密会 テーブルの上の兎の死体 少年の幼い妹の「溺死」 サーカスのポスター 映画のポスター 時間の配列を無視して提示さ…

ジェイムズ・ジョイス 『ユリシーズ』

第1部 1 テレマコス (塔) 2 ネストル (学校) 3 プロテウス (海岸) 第2部 4 カリュプソ (家) 5 食蓮人たち (浴場) 6 ハデス (墓地) 7 アイオロス (新聞社) 8 ライストリュゴネス族 (昼食) 9 スキュレとカリュブディズ (図書館) 10 さまよ…

ニーチェは没落したか

最近買った本(09/01/01〜01/12) エルンスト・ブロッホ 『この時代の遺産』(水声社) ヨアヒム・ケーラー 『ニーチェ伝 ツァラトゥストラの秘密』(青土社) 大澤真幸 『増補 虚構の時代の果て』(ちくま学芸文庫) 町田俊之監修 『アート・バイブル2』(…

フランツ・カフカ 『城』

深い雪に覆われ、霧と闇に包まれたある夜ふけ、測量士Kが城主ヴェストヴェスト伯爵の依頼で村にやってくる 「この村は城のものなのです。だからここに住んだり泊まろうという人は、城に住んだり泊まるのと同じことで、伯爵の許可なしにはできないのですよ。…

ウィリアム・フォークナー 『八月の光』

リーナ・グローブ: 臨月の女。自分を捨てた男(バーチ/ブラウン)を捜しに旅に出ている。 バイロン・パンチ: 中年男。リーナを見て恋に落ちる。リーナの出産を助け、リーナとともにブラウンを探す旅に。 バーチ/ブラウン: リーナの恋人。バーデンの殺害…

太宰治 生誕100年 ――神話、安部公房、大江健三郎

「生誕100年 映画3本」 (2009/01/01 読売) 「太宰治VS.松本清張 架空対談(構成・清水義範)」 (2009/01/04 産経) 「生誕100年 新春座談会(安藤環、川上未映子、安藤宏)」 (2009/01/05-06 毎日) 太宰生誕100年を迎え、各地で記念イベントが催される…

「天井のない監獄」の中で

ガザ「狂ったような状況」 イスラエル、市内攻撃激化 (2009年1月7日 朝日新聞 国際面) イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの地上攻撃は6日も続き、人口が密集している北部のガザ市を包囲、イスラム過激派ハマスとの本格的な交戦状態が続いている。…

ジル・ドゥルーズ/フェリックス・ガタリ 『カフカ マイナー文学のために』

挙げられる顔、屋根または天井を突き破る頭は、うなだれた頭に対応するように見える。それはカフカの作品のいたるところに見出される。(p.3) カフカにとって関心があるのは、意味論的に作られた、構成された音楽ではなく純粋な音のマチエールである。(p.6…

フョードル・ドストエフスキー 『カラマーゾフの兄弟』

3つの翻訳(原久一郎、原卓也、亀山郁夫) 農奴解放と父の死/父(フョードル・カラマーゾフ)の死と兄弟たち ドミートリー・カラコーゾフによる皇帝暗殺テロ未遂事件 「(イワンは)人類から不死に対する信仰を根絶してしまえば、たんに愛ばかりか、この世…

John Coltrane Quintet with Eric Dolphy / Impressions

モダン・ジャズからフリー・ジャズへ。最も燦然と輝いていた時代の音。コルトレーンは言うまでもなく、エリック・ドルフィーが神がかったように素晴らしい。

序は多く最後に書かれる。奇妙なことだ

最近買った本(2008/12/20〜12/31) ヴァルター・ベンヤミン 『子どものための文化史』(平凡社ライブラリー) エルンスト・ブロッホ 『ナチズム』(水声社) 佐々木中 『夜戦と永遠 フーコー・ラカン・ルジャンドル』(以文社) 松本光弘 『グローバル・ジ…

大澤真幸、北田暁大 『歴史の<はじまり>』

世界の中心に行っても/世界から疎外されているという感覚は/解消できない ぼくらが知りつつあることは/最小国家こそが最大国家ではないか/という逆説です 【目次】 ポスト<日本戦後史>にむけて 「その程度のもの」としてのナショナリズム <知らないこ…

松岡正剛 『方法日本1 神仏たちの秘密』

【目次】 第1講 日本という方法 第2講 神話の結び目 第3講 仏教にひそむ謎 ルネ・ジラールは世の当初に隠されているのは「犠牲」と「復讐」だったのではないかと書いている。(p.130) [造化三神(アメノミナカヌシノカミ、タカミムスビノカミ、カミムス…