知られざるゴヤ

ゴヤの「巨人」、実は弟子の作品 プラド美術館近く公表(www.asahi.com 2009年1月22日3時1分)

 スペインを代表する画家フランシスコ・デ・ゴヤ(1746〜1828)の作品と見なされてきた絵画「巨人」が、実は他の画家の作品だったとする調査報告書を、所蔵するマドリードプラド美術館が近く公表する。「巨人」は同館で最も人気が高い作品の一つ。
 
 同館関係者によると、真の作者はゴヤの弟子アセンシオ・フリアとされる。この作品は動物の描き方に粗さが目立つなど、ゴヤ本来の作品との違いが指摘されていた。同館は昨年6月、作者がフリアである可能性が高いと発表、専門家による検証作業を続けていた。
 
 「巨人」は1808〜12年ごろの制作とみられてきた。今後も同館で展示されるという。プラド美術館はパリのルーブル美術館、ロシア・サンクトペテルブルクエルミタージュ美術館などと並んで世界を代表する絵画館の一つで、ゴヤやベラスケス、ルーベンスのコレクションで知られる。

ゴヤ「巨人」は弟子作か プラド美術館専門家が見解 (2008/06/27 09:52 【共同通信】)
 【パリ27日共同】スペインからの報道によると、マドリードプラド美術館の専門家らは26日、スペインの画家ゴヤ(1746−1828年)の作品とされてきた同美術館所蔵の「巨人」は、実際にはゴヤの弟子が描いた作品とみられるとの見解を発表した。
 
 ゴヤは近代絵画の創始者の一人とされ、逃げ惑う人々や動物の上に力強い男性の裸体を描いた「巨人」はゴヤの代表作に数えられてきた。
 
 しかし専門家らは、ゴヤは人物や動物を極めて入念に描くことで知られているが、「巨人」ではウマやウシなどの描き方が中途半端だと指摘。またエックス線で分析したところ、完成時の構図には反映されていない複数の下書きが見つかったという。
 
 専門家らは「ゴヤは絵画を描く際、決してためらうことがなく、自分が何を描こうとしているのかをよく知っていた」として、こうした下書きはゴヤらしくないとの見方を示した。

 1789年、ゴヤは43歳の時に時の王カルロス4世の宮廷画家となりながら、わずか3年後の1792年には大病を患い、聴覚を失ってしまう。「着衣のマハ」「裸のマハ」など著名な作品は、いずれも音のない世界の中で書き残した作品で、晩年にはマドリード郊外に「聾者の家」を購入し、幽閉状態に身を置きつつ、『わが子を食うサトゥルヌス』など「黒い絵」シリーズを遺したことはよく知られている。
 
 ゴヤはベラスケスと並びスペイン最大の画家と賞賛されながら、その世界史的な運命と数奇な生涯から「悲劇の画家」と称されることが多い。「狂気」や「魔女」などグロテスクなテーマにもかかわらず、見る人を熱烈に惹きつけて離さない魅力。その大きな遺産の一つである『巨人』が、筆致の荒さなどからゴヤの作ではなく、弟子のアセンシオ・フリアの筆によるものであったとする調査結果が近くプラド美術館より報告される。