松岡正剛 『方法日本1 神仏たちの秘密』

【目次】

  • 第1講  日本という方法
  • 第2講  神話の結び目
  • 第3講  仏教にひそむ謎

ルネ・ジラールは世の当初に隠されているのは「犠牲」と「復讐」だったのではないかと書いている。(p.130)
 
造化三神(アメノミナカヌシノカミ、タカミムスビノカミ、カミムスビノカミ)から7代目にイザナギイザナミが生まれる]よみがえったイザナギ(擬死再生のイニシエーション)は川で禊をします。日本の物語の中での最も古い禊ですね(→左目アマテラス・右目ツクヨミ・鼻スサノオ三貴子誕生) : 「穢れのステージ」から「浄めのステージ」へ(p.149)
 
高天原パンテオン/出雲パンテオン →日向(高千穂)パンテオン(p.150)
 
私たちが現在の日本の繁栄を考えるには、満州というあの疑似帝国にあったモデルのことを知らなければいけません。それを吉田茂岸信介が敗戦後の日本にもってきたことによって、今日の日本国ができ上がったということを思い出すべきかもしれません。(p.152)
 
真床覆衾 大嘗祭天孫としての玉体の継承)(p.170)
 
ニライカナイ マレビト(稀なる人)(p.229)
 
トヨウケはアマテラスがやってくる前から伊勢にいた神だったのではないか。それが、アマテラス信仰と融合させられて、いまの伊勢神宮になったというふうに推察できます。(p.216) → 異説: 大神(天照大神)が、「私一人では寂しいので豊受大神をそばに呼んでほしい」と告げた。それによって、丹波の国から豊受け大神を迎えて伊勢の地にまつったという。(武光誠『知っておきたい日本の神様』p.61)
 
田中智学や本多日生は、法華経を確信して生命の力を謳歌し、そこに国粋主義アジア主義を加味した「日蓮主義運動」のようなものをおこしています。 …国柱会という組織をつくり、国体と仏教というものは一緒になるのではないかということを考え、多くの人たちに影響を与えていくんですね。(p.245〜7)
 
なぜ日蓮宗が、あるいは日蓮主義というものが、近代日本の中でテロリズムなどと結びついたのか(p.252)
 
六道(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天)輪廻/四聖(声聞、縁覚、菩薩、仏) 十のレイヤーを超えて一気に解脱していく=日蓮の法華一乗  田中智学や北一輝はこの考え方に強く共振 →信仰と国家とが、激しい意志によって仏国土に向かって一乗になっている(p.257〜60)
 
日本では比叡山大乗仏教の受戒をするということが大きなステータスになっていましたから(略)ついつい『法華経』の解釈に議論が集中したんですね。(略)三島由紀夫小乗仏教が好きだったし、おそらく「唯識」を研究していたでしょう。(略)しかし、日本の文化と深くかかわって、融けこんでいったのは圧倒的に大乗仏教でした。(略)その思想は日本では、なかでも無とか無常とか浄土といった感覚に結実しています。(p.269〜70)
 
結局、仏教の原理というのは、世界と人間を静かに治めるためのマスタープランなんです。(ウインドウズやムーディーズの格付け評価、アメリカの防衛シナリオを受け入れるとか)変動相場制やIMF体制や金融の自由化を採用したとたんに、一気に国内がグローバリゼーションに突き進むことにもなっていく。当時の仏教がまさにそれだったわけです。(p.273〜4)
 
最澄の流れは比叡山を中心とした天台法華になり、ここから天台本覚思想(天台密教台密)というものが出て、「山川草木悉皆成仏」という独特の感覚、すべてのものに仏性があるというような、ある意味ではとても日本的な見方が生まれていったのです。
 一方、空海密教真言密教東密)の方からは、真言というものを深く探求する言語哲学のようなものが生まれていきます。(p.287)
 
湯川秀樹素粒子論をやったわけですが、岩波新書の『素粒子』という本の第二版に最後に書いたことは、「素粒子の奥にはハンカチがたためるくらいの隙間がある」ということだったんですね。(略)その言いかたのなかに、湯川さんらしい東洋的な逆旅の精神というか老荘思想というか、そういうものがひそんでいたわけです。それはどこか華厳の哲学とつながってもいたわけですね。(p.308)
 
見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ  藤原定家(p.323)
 
春風の花を散らすと見る夢はさめても胸のさわぐなりけり 西行(p.335)
 
一瞬にして永遠、一つにしてすなわち全体、そうした考え方をあらわしているのが曼荼羅の世界です。曼荼羅とは「本質なるもの」の意味で宇宙の根本原理を解き明かしています。(p.337)
  
★誤植について。p.9田原総一郎(朗)さん、p.148イナザギ→イザナギ、など。p.222の「ボー・ジャクソン」はプロシンガーではなく、メジャーリーグアメリカン・フットボールで活躍したマルチアスリート Vincent Edward "Bo" Jackson を指すのでは?