中沢新一 『アースダイバー』

 9.11のあの出来事があって以来、一神教の本質について考えることが多くなっていた。その宗教は、グローバリズムの見えない背骨をつくっている。一神教という宗教がなければ、おそらく資本主義というシステムは、いまあるような形をとって発達はしなかっただろう。(p.7)
 
 グローバル資本主義の裏庭を掘ると、そこにはユダヤ教にはじまる一神教の精神的遺跡が、すぐに顔を出すのだ。
 「東京の裏庭を掘れば、縄文遺跡がごろごろですよ」
 
 最初のコンピューターが、一神教の世界でつくられたというのは、決して偶然ではない。
 プログラマーのように(一神教の世界)  ←→  からだごと宇宙の底に潜っていき、粘土をこねるようにして(私たちの世界)
 どんなコンピューターだって、結局はシリコンがなければつくれないが、このシリコン自体がもともと「泥」でできたものである。
 
 洪積層(堅い土)  沖積層(砂地の多い別の地層)
 
 東京の地図を描き直してみると、複雑な地形をしたフィヨルド状の海岸地形だったことが見えてくる。(略)東京を歩いていて、ふとあたりの様子が変だと感じたら、十中八九そのあたりはかつて洪積層と沖積層のはざまにあった地形だということが分かる。
 
 
 …東京の魅力は、ほかの大都市ではすでに完全に見えなくなってしまっている人間の精神層が、なにかの理由で地表近いところでむきだしになっていて、そのためにいわば「野生の思考」と資本主義的な「現代の思考」とがひとつのループ状に結び合って、東京の興味深い景観をつくりなしているのではないか(p.242)