典型的な一日を破壊する「暴力」に抗する

 有名私大の教授がキャンパス内で刺殺されるという痛ましい事件から4日が経つ。現時点で犯人は捕まっていないが、「犯人はT教授の行動パターンや現場の構造を把握したうえ、入念に準備して犯行に及んだ疑いが強い」(朝日新聞)とのこと。傷跡の多さから、被害者は犯人からよほど大きな恨みを買っていたのではという見方も流布しているが、犯人が顔見知りの場合、息の根を止めなければという焦りと恐怖で、必要以上に被害者を傷つけるというのはよく聞く話だ(もちろん深い憎悪や利害関係が絡まなければ、そもそもこのような犯行に及ぶこともないのだろうが)。
 
 この事件は無関係な人間を「巻き添えに」していない、という点で、秋葉原事件のような「無差別殺傷」犯罪とは一線を画している。地元駅前の書店でつらつらと立ち読みした最新刊の新書(書名、著者名は失念)によると、秋葉原事件に象徴される無差別殺人事件のことを、FBIではアベンジャー(avenger=復讐者)犯罪と分類し、その行動や特性などを詳細にプロファイリングしているとのこと。そして、欧米はもちろん、わが国でこうした種類の犯罪が増加しているのは、「自己愛的な社会」に原因があり、市場経済に「内奥まで」支配されたことによって、社会が砂漠化してしまったからだという。
 それでは、どうすればこのような「アベンジャー型犯罪」の発生を回避できるのかといえば、「悪いことは、はっきり叱る」(ぱらっと捲ったときに出くわした小見出し)。…そこでひとまずこの本をもとの平台に戻す。
 
 結局、土曜日は斉藤環の『心理学化する社会』(河出文庫)と茂木健一郎『脳のなかの文学』(文春文庫。島田雅彦の解説でも読むかと)、それにバラク・オバマを論じた対談集(集英社新書、文春新書)を購入し帰宅する。