永遠に再開されない審理

オバマ大統領、グアンタナモ収容所の閉鎖命令に署名 (www.asahi.com 2009年1月23日1時24分)
 オバマ米大統領は22日、キューバグアンタナモ米軍基地にブッシュ前政権が設置した対テロ戦収容所について、1年以内に閉鎖することを命ずる大統領令に署名した。
 
 グアンタナモ収容所は、国際法にも国内法にも制限されない治外法権の地として同基地を使い、「敵」とみなす人物を無期限に拘束する動きだとして、米国内外から批判を浴びてきた。ブッシュ政権下の米国の単独行動主義の象徴になってしまったこともあり、傷ついた米国への国際的な信頼回復のために閉鎖を決断したとみられる。
 
 現在拘束されている約240人の収容者については、釈放すべきか、通常の刑事裁判または軍法会議にかけるべきかを審査する。収容所に併設されていた特別軍事法廷は、無期限に停止する。

脱・単独主義 多難 オバマ政権の挑戦(2) (2009年1月23日 朝日新聞
 
 カリブ海に面するキューバグアンタナモ米軍基地の飛行場跡の旧管制塔ビル。ここに、ブッシュ米前政権が「テロとの戦い」で拘束した人物を戦争犯罪などで裁く場として設けた特別軍事法廷がある。
 オバマ大統領が就任した翌日の21日午前。法廷で、国際テロ組織アルカイダの幹部で9.11同時多発テロの首謀者とされるハリド・シェイク・モハメド被告ら5人の予審があった。
 だがこの法廷での裁判は、この日事実上幕切れを迎えた。オバマ氏の意向を受けたゲーツ国防長官の命令で、120日間の審理延期を軍検察官が申し立て、裁判長が認めたからだ。グアンタナモ収容所そのものの見直し作業を待つのが理由だが、一連の裁判が「おそらく永遠に再開されない」(弁護団の一人)との見方が支配的だ。(略)
 
 素早い動きには理由がある。最大時に800人近くを収容し、今も240人以上が拘束されるグアンタナモ収容所や併設された特別軍事法廷は、拷問疑惑の舞台となったイラクアブグレイブ刑務所(すでに閉鎖)と並び、米国による単独行動主義の象徴だった。国際法、国内法のいずれにも制限されず、無期限の拘束や公正さに疑いがあるような裁きをする試みだと批判されてきたのだ。
 しかし収容所や法廷を閉鎖したところで、その後の道のりは決して容易ではない。
 収容者の約3分の1は米軍ですら「脅威でない」と認めるが、出身国に帰国させると拷問など迫害を受ける恐れがあり、受け入れ先が見つからずにいる。さらに問題なのは、反米テロの「確信犯」といえる集団の扱いだ。代表例がモハメド被告らで、同時多発テロにかかわったことを誇り、「早く有罪にせよ」と殉教者を目指している。現実には釈放は難しい。(後略)