「天井のない監獄」の中で

ガザ「狂ったような状況」 イスラエル、市内攻撃激化 (2009年1月7日 朝日新聞 国際面)
 イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの地上攻撃は6日も続き、人口が密集している北部のガザ市を包囲、イスラム過激派ハマスとの本格的な交戦状態が続いている。
 英BBCなどのメディア映像によると、ガザ最大のシファ病院の玄関には絶え間なく救急車が到着。病院内は人であふれかえり、ベッドに空きはない。床に寝かされた幼児の胸に手をあて必死に心臓マッサージを繰り返す医師。診察台に寝かされた子どもの診察にあたっていた医師から「亡くなっています」と告げられた父親は天井を仰いで号泣を始めた。
 「息子の遺体をガザに埋葬してやりたいが、どうすることもできない」
 イスラム教では、死後できるだけ早く遺体を埋葬すべきだとされる。カルムティさんは息子の遺体とともにガザに戻ろうとしたが、越境許可がエジプト治安当局から出ない。ガザに残る妻子は、攻撃を受けてすべての窓ガラスが割れた家を逃れ、親類宅に身を寄せておびえている。
 
ガザ地区「天井ない監獄」:
 種子島より少し小さい面積に約150万人が暮らす。うち約100万人が48年の第1次中東戦争で、いまのイスラエルにある故郷を追われた難民と子孫たちだ。総延長約75キロのイスラエルとエジプトとの境界は、金網フェンスやコンクリート壁でふさがれている。人や物の出入りができるのは5カ所の検問所だけ。住民はガザを「天井のない監獄」と呼ぶ。
 特にイスラエルとの「2国家共存」に反対するハマスが07年6月にガザを支配してから、イスラエルはほぼ完全封鎖を敷いた。建設用資材や機械部品が入らず、生産した農作物などを輸出できない。もともと高かった失業率が今は5割を超すといわれる。
 

イスラエル市民9割、ガザ攻撃支持 「被害出ても正当」 (www.asahi.com 2009年1月10日13時57分)
 イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃は10日未明も続き、AFP通信によると、パレスチナ人の死者は800人を超えた。ガザ住民の犠牲は増える一方だが、世論調査ではイスラエル市民の9割以上がイスラム過激派ハマスが支配するガザへの攻撃を支持しており、国連安全保障理事会の停戦決議後もイスラエルが攻撃の手を緩める気配はない。
 (略)この結果は、イスラエル軍が目標とするハマスの武器密輸トンネルの完全な破壊などが終わるまでは、戦闘を続けることが必要と判断する市民が多数を占めていることを示している。

 旧約聖書士師記』にはイスラエル民族の英雄、怪力サムソンの伝説が登場する。サムソンはペリシテの女・デリラの奸計に合い、三度デリラを侮ることで窮地を脱しながら、四度目には遂に自らの秘密を打ち明け、密告により頭を剃られ怪力を失ったサムソンはペリシテ人の手に落ち、目を抉り取られてしまう。その時に、サムソンが捕虜として連れてこられるのがこの「ガザ」の町だ。
 サムソンはここで青銅の足枷を嵌められ、牢屋で粉を引かされるのだが、異教徒たちの祝祭の場で見せ物とするため連れ出されたその時、再び髪の伸びたサムソンは建物の支柱を怪力で毀し、崩壊する瓦礫の下、多くのペリシテ人とともに自らも死ぬ。