2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

中野京子 『怖い絵』

恐怖の源、それは何より「死」である。肉体の死ばかりでなく、精神の死ともいうべき「狂気」である。直接的な恐怖はほとんど全て、このふたつの死へと収斂されると言っていいだろう。……ある種の「悪」が燦然たる魅力を放つように、恐怖にも抗いがたい吸引力…

佐藤優 『テロリズムの罠 右巻――忍び寄るファシズムの魅力』

『左巻――新自由主義社会の行方』と同時発売された時事評論集。マルクス『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』冒頭の有名な一節をもじり、「はじめに――危機の資本主義とファシズムの反復」で佐藤優は、2008年11月4日に第44代アメリカ合衆国大統領に選出され…

村上龍 『無趣味のすすめ』

月刊『GOETHE』に連載された記事を纏めたエッセー集。書名と同じタイトルの記事に始まって、エッセー「盆栽を始めるとき」に終わる構成に、村上龍一流のアイロニーを感じる。判型、紙質、組版にセンスを感じさせる一冊。 「真の達成感や充実感は、多大なコス…

「弾道ミサイル破壊措置命令」発令 “飛ぶ矢”に矢は当たるのか

「弾道ミサイル破壊措置命令」を発令 北朝鮮発射準備で (www.asahi.com 2009年3月27日11時17分) 北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2」とみられる機体の発射準備を進めていることを受け、政府は27日、安全保障会議(議長・麻生首相)を開き、ミサイ…

和平崩壊への序曲? 新政権は発足へ

ネタニヤフ政権発足へ イスラエル、左右連立30日にも (www.asahi.com 2009年3月26日1時20分) イスラエルで新政権の組閣を進めている右派政党リクードのネタニヤフ党首は25日、党の会合で「来週中に国会に組閣(名簿)を報告する」と述べ、新政権発足の…

四方田犬彦 『濃縮四方田』

四方田犬彦の「100冊上梓記念」アンソロジー。発行は2009年2月10日となっているが、3月にはもう増刷されていたので、結構売れているのかもしれない。500ページ超のボリュームなので、アンソロジーとしては1冊当たりおよそ5ページの配分ということになる。ぼ…

ライオンとネズミ

11:47 無題 「卒業おめでとう!」 11:51 RE: 「どうも」 祝辞 イソップ物語と「星の王子様」

「対テロ戦」 カギ握るイスラーム主義国家の動静

シャリフ氏 復権の布石 与党分断へ首相に接近 (2009年3月24日 朝日新聞 国際面) 野党側による前最高裁長官の復職要求を政府が受け入れ、当面の政治危機が回避されたパキスタンで、野党指導者のシャリフ元首相の存在感が増している。政権内でザルダリ大統領…

高橋源一郎+柴田元幸 『小説の読み方、書き方、訳し方』

「村上春樹がカート・ヴォネガットならば、高橋源一郎はドナルド・バーセルミではないか」という柴田元幸のフリからはじまる、現代ニッポンと海外(アメリカ)の「文学」談義。「小説で書くことがない、というのは作家が言わない本当のことの一つ、というか…

卑弥呼の宮殿――日本最初の都市

3世紀、卑弥呼の宮殿?整然と並ぶ建物跡 奈良・纒向 (www.asahi.com 2009年3月21日11時30分) 邪馬台国の有力候補地とされる奈良県桜井市の纒向(まきむく)遺跡(2世紀末〜4世紀初め)で、3世紀前半の三つの建物跡が同じ方位を向き、同一線上に並んで…

川上未映子 『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』

朝日新聞の3月14日付文化欄に、第14回中原中也賞を受賞した川上未映子の第1詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』を紹介する記事が掲載されていた。選評では、「女性の性的な身体やその部位のもつ痛みや快楽の感覚が……常に観念によって媒介されてい…

村上春樹 『アンダーグラウンド』

…まず想像していただきたい。 ときは一九九五年三月二〇日、月曜日。気持ちよく晴れ上がった初春の朝だ。まだ風は冷たく、道を行く人々はみんなコートを着ている。昨日は日曜日、明日は春分の日でおやすみ――つまり連休の谷間だ。あるいはあなたは「できたら…

プラトンはなぜ詩をあれほど恐れたのか

最近買った本(2009/03/01〜03/18) J.ジョイス/柳瀬尚紀訳 『ダブリナーズ』(新潮文庫) J.ヒリス・ミラー 『文学の読み方』(岩波新書) 高橋源一郎 『大人にはわからない日本文学史 (ことばのために)』(岩波書店) 高橋源一郎+柴田元幸 『小説の読…

佐藤優 『テロリズムの罠 左巻――新自由主義社会の行方』

本書「左巻」は、著者が角川学芸出版のウェブマガジン『WEB国家』に連載した「国家への提言」のうち、新自由主義が日本の国家と社会に与える影響について書いた論考に加筆、編集を加え、「『蟹工船』異論」を書き下ろしたもの(第1部「滞留する殺意」、第2部…

「転向」――積み残された“知”の瓦礫を嗤う

構造改革の旗手、行き過ぎた市場経済を批判 中谷巌氏「転向」の波紋 (2009年3月14日 朝日新聞 文化面) 小渕内閣の経済戦略会議議長代理として構造改革の旗振り役だった中谷巌・三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長が市場経済の行き過ぎ批判への「転向…

鎌田浩毅 『世界がわかる理系の名著』

第1章 生命の世界 ダーウィン『種の起源』/ファーブル『昆虫記』/メンデル『雑種植物の研究』/ワトソン『二重らせん』 第2章 環境と人間の世界 ユクスキュル『生物から見た世界』/パヴロフ『大脳半球の働きについて――条件反射学』/カーソン『沈黙の春』…

寺山修司 『ポケットに名言を』

言葉を友人に持ちたいと思うことがある。 それは、旅路の途中でじぶんがたった一人だと言うことに気がついたときにである。 このような台詞は、寺山修司の本の中だけで出会いたい。 「少年時代、私はボクサーになりたいと思っていた。しかし、ジャック・ロン…

カバをのみ込んだニシキヘビ  金融不安高まる欧米

もがく世界経済 リーマン・ショックから半年 (2009年3月14日 朝日新聞 経済面 抄) 昨年9月15日の「リーマン・ショック」から半年。米国発の金融危機は、またたくまに実体経済に波及。欧米では金融機関の「国有化」や「公的管理」が相次ぎ、輸出依存の日本…

ピエール・クロソウスキー 『かくも不吉な欲望』

1 ニーチェの『悦ばしき知識』の基本的テーマについて 2 ジッドとデュ・ボスと魔神 3 クローデルとジッドの往復書簡の余白に 4 バルベイ・ドールヴィイ著『妻帯司祭』への序文 5 ジョルジュ・バタイユのミサ 6 言語と沈黙とコミュニスム 7 モーリス・ブラン…

“タリバーン化”するヒンドゥー至上主義  歪められた「古代インド」への伝統回帰

「ヒンドゥー至上」過熱 インドで反欧米・他宗教排斥 (2009年3月11日 朝日新聞 国際面) パブでの女性の飲酒やバレンタインデーのお祝いは許さない――インドでヒンドゥー至上主義集団が独善的な「インドの伝統」を振りかざし、欧米文化や異なる宗教の排斥を…

万能細胞 ――生と死の「境界」と宗教

iPSマウス、1年後6割がんに 京大・山中教授が報告 (www.asahi.com 2009年3月7日11時23分) がん関連遺伝子を含む四つの遺伝子でつくった人工多能性幹細胞(iPS細胞)をもとにして生まれたマウスの約6割が、約1年後にがんになったことを、山中伸弥…

丸谷才一+鹿島茂+三浦雅士 『文学全集を立ちあげる』

――文学的キャノンとは何か? 丸谷才一は冒頭、キリスト教において公認された聖典(holy text)を意味するcanon(正典)をもじり、時の権威者によって偉大な文学作品であると価値を認められた『文学的キャノン(literary canon)』形成について語り、ハロルド…

塩川伸明 『民族とネイション ――ナショナリズムという難問』

第1章 概念と用語法 エスニシティ・民族・国民/さまざまな「ネイション」観――「民族」と「国民」/ナショナリズム/「民族問題」の捉え方 第2章 「国民国家」の登場 ヨーロッパ――原型の誕生/帝国の再編と諸民族/新大陸――新しいネイションの形/東アジア――…

Give Ireland Back to the Irish

北アイルランド 英軍基地の兵士、襲撃され6人死傷 (www.asahi.com 2009年3月8日19時44分) 英国・北アイルランドの中心都市ベルファストから北約25キロにあるアントリムの英軍基地で7日夜、何者かが発砲し、英兵2人が死亡、英兵2人と民間人2人の計4…

ジョージ秋山 『銭ゲバ』

70年代半ばの古本屋は――それも都会の大きな古書店街などではなく、大阪・岡町あたりの商店街を奥深く入った、人気のない、鄙びて古本の饐えた臭いの籠もった小さな古書店は――淫靡で、蠱惑的な、黴びてやりきれない魅力を漂わせた古本の格好の「隠れ家」にな…

曽根幸子+滝本誠 『アート系映画 徹底攻略』

ホテルで会った女性に「去年、共に発つと約束したはず」と迫る男、記憶にないと拒絶する女、二人を見つめる女の夫(?)。彼らの名も明らかにされず、物語としての起承転結もなく(この映画は時間に沿って伸びてゆくのでなく、時間の曖昧なそれ自身の内へ螺…

パリから

しょう帰国 (シャルル・ド・ゴール4日18:30→成田5日14:10)。

太宰治 『父』

イサク、父アブラハムに語りて、 父よ、と曰ふ。 彼、答へて、 子よ、われ此にあり、 といひければ、 ――創世記二十二ノ七 今日(3月4日)は、父の命日だ。直接的だけれど、この季節になると、太宰治の『父』を思い出す。短編集『ヴィヨンの妻』所収、新潮文…

入江泰吉・杉本苑子 『飛鳥路の寺』

昭和の高度成長期、どこの家庭にも一冊はあったといっても過言ではない保育社の「カラーブックス」シリーズ(同社ホームページより)。ネットで調べてみるまで知らなかったが、同社は「1999年に和議を申請。その後出版社や文化人、書店などによる経営再建の…

内田樹 『私家版・ユダヤ文化論』

ジェイコブ・シフ(ドイツ生まれ、ユダヤ系銀行家。クーン・ローブ商会グループ総帥) 帝政ロシアのポグロム(反ユダヤ的暴動)に怒り、日露戦争時に日本の戦費調達に協力。ロシア政府発行の戦時公債の引き受けを欧米の銀行に拒絶させる 「Juif est Juif.」 …