万能細胞 ――生と死の「境界」と宗教

iPSマウス、1年後6割がんに 京大・山中教授が報告 (www.asahi.com 2009年3月7日11時23分)

 がん関連遺伝子を含む四つの遺伝子でつくった人工多能性幹細胞(iPS細胞)をもとにして生まれたマウスの約6割が、約1年後にがんになったことを、山中伸弥・京都大教授が5日、日本再生医療学会で明らかにした。
 
 4遺伝子をマウスの胎児の皮膚に導入してiPS細胞を作ったとする07年6月の論文で、それをもとにして生まれたマウスは約2割に腫瘍(しゅよう)ができたと報告。学会で、1年後では発がん率は6割に高まったとした。
 がんに関連する遺伝子「c―Myc」を除いて3遺伝子でもiPS細胞を作れるが、成功率は100分の1に落ちる。山中さんは「c―Mycはがんの原因になるが、ないと不完全なiPS細胞になりやすいので、c―Mycが本当に悪者なのかは、まだ研究が必要だ」と話した。
 
米ES細胞研究、制限を解除へ オバマ大統領が9日署名 (www.asahi.com 2009年3月7日10時57分)
 
 オバマ米大統領は9日、ヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究に対する連邦政府予算の支出にかかっている制限を解除する大統領令に署名する。米主要メディアが6日、一斉に伝えた。ブッシュ前政権の政策からの大きな転換で、米国のES細胞研究に弾みがつくことになりそうだ。
 
 難病治療などへの応用が期待されるES細胞は、不妊治療などで余った受精卵を壊してつくられる。ブッシュ前大統領は、受精卵を生命の萌芽(ほうが)と見なすキリスト教右派に配慮し、01年8月以降につくられた新しいES細胞を使う研究への連邦予算の支出を禁止し、研究が遅れる要因になっていた。新しい大統領令は、新しい細胞への支出を認める見通し。
 
ES細胞とiPS細胞 (www.jiji.com 2009/03/10-09:11)
 ES細胞とiPS細胞 いずれも、ほぼ無限に増殖し、人体のあらゆる組織に成長する能力を持つ「万能細胞」。ヒト胚(はい)性幹(ES)細胞は不妊治療で余った受精卵から作る。米ウィスコンシン大が1998年に初めて培養に成功した。受精卵を生命の源ととらえる保守層に反対論が根強い。
 人工多能性幹(iPS)細胞は受精卵を使わず、ヒトの皮膚細胞に特定の遺伝子を導入することで作られ、ES細胞に近い性質を持つ。山中伸弥京都大教授らが2007年に開発に成功した。両細胞ともに、アルツハイマー病や脊椎(せきつい)損傷などの治療への応用が期待されている。(ワシントン時事)
山中伸弥(やまなか・しんや