「弾道ミサイル破壊措置命令」発令 “飛ぶ矢”に矢は当たるのか

弾道ミサイル破壊措置命令」を発令 北朝鮮発射準備で (www.asahi.com 2009年3月27日11時17分)
 
 北朝鮮が長距離弾道ミサイルテポドン2」とみられる機体の発射準備を進めていることを受け、政府は27日、安全保障会議(議長・麻生首相)を開き、ミサイルが日本の領土・領海に落下する場合に備え、自衛隊法に基づく「弾道ミサイル破壊措置命令」を初めて発令することを決めた。これを受け、浜田防衛相は自衛隊に対し、破壊措置命令を発令した。
 
 発令は4月10日まで。北朝鮮は4月4〜8日の午前11時〜午後4時の間に、「人工衛星を運搬するロケット」の発射を予告している。
 河村官房長官は安保会議後の記者会見で「通常は領域内に落下することはない」との見方を示したうえで、「国民には通常の生活を送っていただきたい。万万が一に備え警戒態勢をとる」と述べた。
 
 破壊措置命令には(1)「日本に飛来する恐れがある」時に閣議決定を経て防衛相が命じる(自衛隊法82条の2第1項)(2)「日本に飛来する恐れがあるとは認められない」が、事態の急変に備え、あらかじめ防衛相の判断で原則非公表で命じる(同第3項)――の2種類がある。
 政府は今回、飛来する恐れは認められないが、「事故が発生したら落下する場合がある」(河村氏)と判断し、3項を選択。河村氏は非公表としてきた3項による破壊命令を公表した理由について(1)北朝鮮の事前通知があった(2)国民の不安を和らげるためできるだけ説明する必要があった――の2点を挙げた。
 
 迎撃や情報収集に備え、政府はイージス艦「ちょうかい」「こんごう」の2隻を日本海に、イージス艦「きりしま」を太平洋に配備する。日本海に配備される2隻は、迎撃用の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載済み。
 迎撃用の地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)は首都圏とミサイルが上空を通過するとみられる東北地方の計5カ所(陸上自衛隊の秋田、岩手、朝霞各駐屯地、航空自衛隊習志野分屯基地市ケ谷基地)に配備する。
 
 政府はミサイル発射を確認した場合、地方自治体と報道機関に対し、発射後5〜10分程度での公表をめざす。発射の30分〜1時間後には落下したとみられる場所も公表するとした。政府は27日、首相官邸の危機管理センターに設置した情報連絡室を官邸連絡室に格上げした。
 

ミサイル迎撃、外相「難しい」 政府筋「当たらない」 (www.asahi.com 2009年3月24日13時34分)
 
 北朝鮮が発射を予告している「人工衛星」が日本に落下しそうな場合、迎撃が技術的に可能かどうかについて、中曽根外相は24日の閣議後の記者会見で「難しい」との認識を示した。政府筋も23日、「当たらないと思う」と発言。政府は近く、弾道ミサイル破壊措置命令を発令する方針だが、足元からそもそもの技術論で疑問が出た格好だ。
 
 政府筋は「鉄砲をバーンと撃った時にこっちからも鉄砲でバーンと撃って(弾と弾が)当たるか。当たらないと思う。口開けて見ているしかない」との見方を示した。「実験したときは成功したと言うが、それは、『はいこれから撃ちますよ。はい、どーん』と撃ったやつだった。いきなりドーンと撃ってきたら、なかなか当たらない」とも述べた。
 中曽根氏は、この発言について感想を問われ、「難しいのは事実だ。やったことがない。どういう形でどういう風に飛んでくるのかわからない」と述べた。一方、浜田防衛相は24日の会見で「そのようには考えていない。今まで準備万端ということで万全になるように努力をしてきている」と反論した。
 
 政府筋発言に対しては、24日開かれた自民党国防関係3部会でも「発言が報道で流れること自体が極めてマイナスだ」「緊張感が足りない」と批判が相次いだ。中谷元・元防衛庁長官は「釈明なり事実の打ち消しなどを求めたい」と記者団に述べた。
 
 迎撃を試みる場合、まずは日本海に展開したイージス艦から迎撃用の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を発射する想定。ただ、自衛隊はSM3の迎撃実験を過去に2度実施し、うち1度は失敗している。