カバをのみ込んだニシキヘビ  金融不安高まる欧米

もがく世界経済 リーマン・ショックから半年 (2009年3月14日 朝日新聞 経済面 抄)
 
 昨年9月15日の「リーマン・ショック」から半年。米国発の金融危機は、またたくまに実体経済に波及。欧米では金融機関の「国有化」や「公的管理」が相次ぎ、輸出依存の日本経済は不況の直撃を受けた。世界経済は1930年代の「大恐慌」以来の危機にもがき苦しんでいる。
 
 (米金融大手JPモルガン・チェースシティグループCEOらによる)直近の業績をひけらかすような異例の発言が相次ぐのは、金融不安が極度に高まっていることの裏返しでもある。
 
 米証券大手のリーマン・ブラザーズが突然破綻した「リーマン・ショック」は、米政府による本格的な金融救済に道を開いた。ファニーメイなど政府系住宅金融の救済をめぐる注入枠を含めると、米政府が決めた金融機関への公的資金注入額は7千億ドル(約68兆円)超にのぼる。
 自由経済総本山である米国で進む経済の国家管理。米3大銀行を形成するシティやバンク・オブ・アメリカなどが「国有化懸念」の標的となり、日本ですら経験のないトップバンクの実質破綻への恐怖心が、株安をあおる。
 だが、政府がいくら税金を投入しても、金融機関の資産劣化は止まらない。
 
 一方、米国の先を行く形で銀行の国有化が相次いでいる欧州。(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドロイズ・バンキング・グループへの追加支援など)「英国政府はカバをのみ込んだニシキヘビのようになりつつある」と、英紙フィナンシャル・タイムズのコラムニストは指摘する。
 
 さらに政府関与の強化にともなう「金融保護主義」の台頭が、国際的なお金の流れを阻害している。公的資金の注入を受けた銀行は「国内優先で投融資すべきだ」との世論を軽視できず、海外向け資金を引き揚げやすいからだ。
 西洋のマネーが流れ込み、高成長を実現してきた中東欧の新興国では今、その資金が一気に逃げ出し、経済を揺るがす事態へ発展しつつある。
 ただ、中東欧経済が深刻な打撃を受ければ、西欧の金融機関の不良債権の急増という形で、「危機」はブーメランのように西欧に跳ね返ってくる。欧州主要国では、中東欧の「国家救済」の必要性さえささやかれ始めた。