鎌田浩毅 『世界がわかる理系の名著』

第1章  生命の世界
ダーウィン種の起源』/ファーブル『昆虫記』/メンデル『雑種植物の研究』/ワトソン『二重らせん』
第2章  環境と人間の世界
ユクスキュル『生物から見た世界』/パヴロフ『大脳半球の働きについて――条件反射学』/カーソン『沈黙の春
第3章  物理の世界
ガリレイ星界の報告』/ニュートン『プリンキピア』/アインシュタイン相対性理論』/ハッブル『銀河の世界』
第4章  地球の世界
プリニウス『博物誌』/ライエル『地質学原理』/ウェゲナー『大陸と海洋の起原』
 
「理系の名著の中には人類の価値観を根底から覆してきた革命的な書物が多々ある。世界を変えた14冊の本を取り上げ、知っているようで知らないその中身をわかりやすく説いたエデュテインメントな解説本」(紹介文より)
 
 新書本1冊の中で、14冊の書物(科学者の素顔と学説成立の過程、さらに現代のガイドブック)を紹介しようとしているため、一つひとつのエピソードに割かれた紙幅が余りにも短い。
 
 全体的に広く知られた事実の記述が多く、驚くべき知見の提示はそれほど多くない。(タイトルにも謳われているのだから)現代世界との関わりも、本書のようなコラム形式ではなく、本文の中でもっと大胆かつダイナミックに描いてほしかったと思う。
 そんな中、近代地質学の父チャールズ・ライエルと十二歳年下のチャールズ・ロバート・ダーウィンとが親友の関係にあり、ダーウィンは進化論を構築する過程で、ライエルの『地質学原理』に多大な影響を受けたこと(ライエルはダーウィンの『種の起源』刊行に当たって親身に手助けをする。一方、ダーウィンもライエルの仕事を高く評価し、同書の中で『地質学原理』の内容についてくわしく触れているという)、ただしライエル自身は、イギリス国教会から危険思想と見なされていたダーウィンの進化論とはしばらくの間距離を保っていた、というエピソードなどが興味深く読めた。