宮崎哲弥+呉智英 『知的唯仏論』

 (多くの仏教学者や僧侶が原世的な価値観に囚われて、仏教の“凶暴”な側面をあまり論じようとしない光景を見ると)一体何をしているのだ、という焦燥を禁じ得ません。(略)
 私の考えでは、仏教は、先に縷説した独我論的な思考を内側から破る方途を提供できる、たぶん唯一の実践哲学なのに、誰もそこに注目しない。「『この比類なき私』から入り、『縁起する無我』で出る」仏教だからこそ可能な「救済」ですのに。 (宮崎、p.240)
 
 「果たして仏教の教理や修法は現代人を救い得るのか」「縁起や無我の教説はまだブラッシュアップが可能か」「業報や輪廻の観念はなおリアリティやアクチュアリティを備えているか」――という、宮崎の指摘する仏教にとって最も重要であるはずの問いに向かうためのクリティカルで冒険的な「助走」を描いた対談集。