トイレなきマンション

原発ゴミ最終処分、実現へ 世界初、フィンランドの施設 (www.asahi.com 2013年01月24日 抜粋)
 
 北欧フィンランドで、高レベル放射性廃棄物である原発の使用済み燃料を400メートル以深の地下に埋める民間最終処分場計画が大詰めの段階を迎えた。昨年末に建設許可が申請され、同国の審査が順調に進めば来年6月に建設を始める。2020年操業が目標だ。「トイレなきマンション」という原発の課題を世界で初めて乗り越えることになる。
 
■地下400メートルに9000トン埋設
 
 処分場の予定地はフィンランドの首都ヘルシンキから北西へ250キロのバルト海に浮かぶオルキルオト島にある。すぐ近くに同国の電力会社「TVO」のオルキルオト原発1、2号機(沸騰水型、出力各86万キロワット)が運転している。さらに、最新型の3号機(加圧水型、同160万キロワット)が建設中。東芝三菱重工業が参加している4号機の建設準備も進められている。
 
 処分場は、別の地域にあるフォルトゥム社のロビーサ原発1、2号機(加圧水型、出力各48・8万キロワット)と合わせて、計6基の運転で出る9千トンの使用済み燃料を埋める予定だ。
 
 フィンランドはスカンディナビア全体を覆っている極めて古い地層の真ん中にある。堆積岩ではなくて19億年前に形成された結晶質の岩石だ。火山や地震活動はほとんどないという。
 
 ポシバ社は昨年12月28日に建設許可申請を政府に出した。規制機関の審査は1年半ほどで終わるとみられ、20年の操業は計画通りにできそうという。使用済み燃料の処分場はスウェーデンでも建設が決まっているが、25年の試験操業を目標にしており、フィンランドが先行する。
 
 ポシバ社によると6万年後には再び氷河期を迎えると予想され、氷の厚さは2キロにもなる。その重さでこの一帯はある程度沈む。放射能が自然減衰によって無害化される10万年後には、氷が溶けて再び持ち上がる。その際に、地表に近い部分では断層ができたり割れ目が出来たりすると考えられているが、深い部分は大きな変化があるとは考えられていないという。
 
 10万年後まで安全性を保証できるかには異論もある。オンカロを題材に処分の安全性を問うドキュメンタリー映画「10万年後の安全」のミケル・マッセン監督は「とてつもない長い期間の問題。将来の世代に残す是非を多くの人に考えてもらいたかった」と話す。
 
 日本は使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出す政策を進めてきた。その過程で出る高レベル放射性廃棄物を、しっかりした岩盤を探して埋めるという方策だ。処分場の公募は02年に始まったが、立候補している自治体はない。
 
 日本は世界でもまれにみる地震や火山活動が活発な国だ。日本学術会議は千年・万年単位で地下に処分するリスクについて技術や社会的合意形成がなされていないとし、使用済み燃料は地上に暫定保管することを提言している。(以下略)