五木寛之 『下山の思想』『選ぶ力』

 入院中、気軽に読める本はないかと思って選んだ本。結局、ベッドの上ではただラジオに耳を傾けるばかりで、退院後、年明けてから読んだのがこの2冊である。
 
 私たちに唯一、絶対といっていい真実とは、私たちがやがて死ぬ、ということである。それは、究極の真実である。
 この世に絶対などというものは、なかなかないものである。人間にとってもっとも確実、かつリアルな問題こそ「死」だ。

(『下山の思想』 p.109)
 
 いまになって、やっとわかったことは、仏教とは輪廻の鎖を断って、自由になることではない。
 輪廻観というか、輪廻思想こそが断たれるべき相手なのだ。人は永遠に六道をさまようという、その世界観にピリオドをうつ思想が仏教である。

(『選ぶ力』 p.135)
 
 NHKの「ラジオ深夜便」を聴いているかのような、精神が弱っているときにこそ有効な「癒し」の本。