傷ついた脳を回復させる

抗うつ薬、脳細胞生成に効果 藤田保健大、マウスで実験 (www.asahi.com 2013年1月5日07時52分)
 
 うつ病の薬の成分が、意識などをつかさどる大脳皮質で新たに神経細胞を作る働きを促進することが、藤田保健衛生大学のマウスを使った実験で分かった。新しく生まれた細胞には、周りの神経細胞が死ぬのを防ぐ働きもあり、脳卒中などにともなう脳の障害を防ぐ治療法につながる可能性があるという。4日、米国の専門誌に発表する。
 
 脳の神経細胞は、老化とともに減っていくが、大脳皮質などの一部の細胞は大人になっても新しく生まれることが分かっている。だが、治療薬で増やす方法は見つかっていなかった。
 
 研究チームは、海外で使われている代表的なうつ病の薬の成分「フルオキセチン」に着目した。大人のマウスにこの成分を3週間与えて大脳皮質の状態を調べたところ、何も与えないマウスの19倍、新しい神経細胞が増えていた。
 
 また、同じ成分を与えた後、一時的に脳に血が流れないようにして影響を調べた。その結果、大脳皮質から新しく生まれた細胞が、半径110マイクロメートル内の細胞に働きかけ、細胞死を防ぐことも分かった。細胞の興奮状態をしずめる効果があるという。
 
 この治療法を人間に使うことができれば、事故や病気で傷ついた脳の機能を回復させ、後遺症を防ぐことができるかもしれない。
 
 大平耕司講師は「将来は、脳が傷ついても社会復帰できるような治療法を開発したい」と話している。