村山斉 『宇宙は本当にひとつなのか』

 宇宙は遠くに行けば行くほど、昔の姿が見えてくる。われわれは未だ、ビッグバンそのものを見ることはできないが、宇宙背景放射という、いわばビッグバンの「残り火」を観測することで、宇宙を構成するものの内訳を知ることができる。それによると、星や銀河など原子でできている物質は宇宙全体の5%にも満たず、残りは、約23%が暗黒物質、約73%は暗黒エネルギーが占めているという。
 
 暗黒物質の正体は、速度の遅いコールドWIMPではないかと目されている。だが、その粒子はどこにあるのだろうか。リサ・ランドールによると、われわれの宇宙は4次元の膜が2つ平行に並んでいて、そのあいだの空間がワープしており、暗黒物質はこの異次元空間からやって来たのだという。
 
 暗黒物質の正体が明らかになれば、その暗黒物質がつくられた頃の宇宙、すなわち宇宙誕生から100億分の1秒後の宇宙の姿を知ることができるだろう、と著者は指摘する。このほか、異次元方向ににじみ出る「重力」や、超ひも理論ブラックホール、折りたたまれた6次元空間(カラビ・ヤウ多様体)、10の500乗個も生まれた「膨大な宇宙」と人間原理の話など。