ノーベル化学賞は「カップリング反応」の鈴木章氏、根岸英一氏ら3人

 17、18人目の日本人ノーベル賞受賞者が化学賞から出た。鈴木章博士を輩出した北海道大学は今春、国立の基幹大学としては初めて、理学と工学が連携・融合して化学の教育に当たる大学院「総合化学院」を開設するなど、化学系に強い大学だ(大学通信『卓越する大学 2011年度版』)。一方、根岸英一博士は理論物理学南部陽一郎博士と同様、アメリカを拠点に研究活動に取り組んでいる。

ノーベル化学賞鈴木章氏・根岸英一氏ら3人に (www.asahi.com 2010年10月6日19時39分)
 
 スウェーデンの王立科学アカデミーは6日、10年のノーベル化学賞を、鈴木章・北海道大名誉教授(80)、根岸英一・米パデュー大特別教授(75)、リチャード・ヘックデラウェア大名誉教授(79)に贈ると発表した。業績は「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」。鈴木さんは、プラスチックや医薬品といった有機化合物の骨格となる「炭素」同士を結合させる合成法を発見。汎用性が高く、世界中で使われている。根岸さんとヘックさんは、鈴木さんに先だって、パラジウム触媒を使った合成反応を開発した。
 
 日本のノーベル賞受賞は17、18人目となる。化学賞は6人目、7人目。
 授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金の1千万クローナ(約1億2千万円)は受賞者3人で分ける。
 
■「炭素」同士を結合させる画期的な合成法
 
 鈴木さんが発見した有機合成法は「鈴木カップリング反応」として世界的に知られる。北海道大教授だった79年に発見した。
 
 炭素同士をいかに効率よくつなげるかは、有機化学の大きなテーマだ。炭素をつなげる方法の一つとして、70年代ごろから注目を集めていたのが「クロスカップリング反応」だ。
 クロスカップリング反応は、二つの有機化合物の骨格を好きな場所でつなぐことができる。つなぎたい場所に付ける「目印」と、反応を仲介する「触媒」をうまく組み合わせて反応させると、目印が外れて炭素同士が簡単に結合する。鈴木さんは、目印にホウ素とハロゲン化合物、触媒にパラジウム錯体を使う方法を開発した。
 
 鈴木カップリング反応が優れているのは、水溶液中や空気中でも反応が進む点だ。従来のカップリング反応は特別な溶液中などで行う必要があったが、この弱点を克服した。さらに、鈴木カップリング反応は温和な条件で反応が進み、毒性が強い化合物を使わずにすむなど、多くの長所がある。このため、現在も医薬品や液晶の開発などに日本にとどまらず、世界中で幅広く利用されている。
 
 同時受賞した根岸さんは、70年代初め、有機亜鉛化合物と有機ハロゲン化物とをパラジウムまたはニッケル触媒で反応させ炭素と炭素がつながった生成物を得る反応を開発した。ヘックさんも、パラジウムを使って水素を炭素に置き換えることで、炭素と炭素をつなぐ合成反応を発見した。