ノーベル文学賞は「緑の家」のバルガス=リョサ

 近年、文学賞はヨーロッパ勢が圧倒していたので、今年は南北米の作家かと予想。南米ならリョサは最右翼だが、ネットなどでは90年の大統領選敗北がどう影響するかと見られていた。
 08年受賞のル=クレジオと同様、元々邦訳が多く、先日も岩波文庫から『緑の家』の新訳が出たばかりだが、これで『ラ・カテドラル』や『都会と犬ども』など、絶版中の翻訳も復刻されるのは間違いないだろう。ラテンアメリカブームが再来すれば面白いのだが。

ノーベル文学賞にペルーの作家、バルガスリョサ (www.asahi.com 2010年10月7日20時26分)
 
 スウェーデン・アカデミーは7日、今年のノーベル文学賞を、ペルーの作家、マリオ・バルガスリョサ氏(74)に授与すると発表した。同アカデミーは授賞理由を「権力構造の『地図』を作り、個人の抵抗、反抗、挫折を鋭く描き出している」と説明した。
 賞金は1千万スウェーデンクローナ(約1億2千万円)。授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれる。
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 1936年、ペルー生まれ。マドリード大学に留学。59年に短編小説集「ボスたち」をスペインで出版。その後、パリでジャーナリストとして働く。63年に、軍人養成学校での体験をもとに、若者たちの目から社会の偽善や腐敗を告発した長編「都会と犬ども」を発表。緻密な構成と縦横な文体で軍人養成学校の欺瞞を描き、注目された。
 続いて長編「緑の家」(66年)では、貧富の差が激しく、さまざまな文化が混在するペルー社会を描いて高く評価され、ラテンアメリカ文学を代表する作家として確固たる地位を築いた。
 
 81年には、19世紀末にブラジル奥地で起きた宗教的な反乱を描いた「世界終末戦争」を発表。85年に国際文学賞リッツ・パリ・ヘミングウェー賞を受けた。
 
 長編に「ラ・カテドラルでの対話」(69年)、「パンタレオン大尉と女たち」(73年)、「アンデスのリトゥーマ」(93年)、「官能の夢 ドン・リゴベルトの手帖(てちょう)」(97年)などの作品がある。ガルシア・マルケス論やフロベール論などでも深い洞察力を示し、80年代に入ってからは戯曲も発表した。ロンドンやバルセロナでの生活を経てペルーに戻り、76年には40歳の若さで国際ペン会長に選ばれ、社会的な発言も続けている。
 
 90年に中道右派「民主戦線」から大統領候補に立ち、日系のアルベルト・フジモリ氏に決選投票で敗れた。
 
 「都会と犬ども」「緑の家」「世界終末戦争」「楽園への道」など多数が邦訳されている。