暗黒バエ

暗闇で56年、1300世代経たハエの求愛行動に変化 (www.asahi.com 2010年9月5日18時54分)
 
 ショウジョウバエを56年間1300世代以上にわたって暗闇で飼育することで、京都大学が進化の謎の解明に挑んでいる。ハエは今のところ、外見の変化はほとんど見られない。しかし、求愛行動に変化が起きていることがわかってきた。
 
 この「暗黒ショウジョウバエ」は1954年、理学部動物学教室の故森主一教授が飼い始めた。これまで計4代の教授が飼育し、光のない環境が進化にもたらす影響を調べる研究を続けている。
 2007年に文部科学省の「グローバルCOE(卓越した拠点)」として、京都大で生物の多様性と進化についての研究プロジェクトが始まり、この暗黒バエが課題の一つになった。黒いプラスチックの箱の中で約100匹を飼育し、遺伝情報(ゲノム)などを総合的に調べる研究に取り組んでいる。
 
 暗黒ショウジョウバエは目もそのままで光を感じる能力を失っていないが、よく観察すると、「感覚毛」と呼ばれる体毛が1割ほど伸び、生殖行動に変化が見られたという。
 ショウジョウバエのオスは、メスに出会ってメスの性フェロモンを受け止めると、羽をふるわせて求愛ソングを歌う。メスは何度も拒絶することがあるが、それを乗り越えたオスが交尾にいたる。普通のショウジョウバエはこの求愛行動に20分間程度かけるのに、暗黒ショウジョウバエは出会いから交尾までの時間がわずか約3分間だった。
 
 なぜ求愛行動の変化を起こしたのかは「まったくの謎」という。布施直之研究員らはその謎を解き明かそうと、フェロモンの合成やそれを受け止める仕組みにかかわる遺伝子の変化などを調べている。