驚くほど健全

地下の33人「驚くほど健全」 チリ落盤、心理学者分析 (www.asahi.com 2010年9月6日15時0分)
 
 南米チリ北部の鉱山の落盤事故で、救助グループの一員である心理学者が、地下に閉じ込められた作業員33人の心理状態を観察・分析しながらケアにあたっている。地下から送られてきた映像や家族にあてた手紙などから心理状態が把握できるという。
 
 心理学者アルベルト・イトゥラ氏は毎日、救出現場に待機し、閉じ込められた作業員たちと電話で話せるようにしている。声の調子を聞くほか、録画された映像で作業員たちがどんな体の動きをしているか、話す内容と表情に一貫性があるかどうかなどを観察している。また、手紙の筆跡や筆圧などからも精神状態が分かる。イトゥラ氏によると、作業員らの精神状態は「驚くほど、健全」という。
 
 地下の33人は、全体をとりまとめるリーダーや精神的な支えになる人、雰囲気を盛り上げる役割の人のほか、読みたい本を送るよう地上に頼む「図書係」などもいるという。こうしたリーダーの存在や役割分担が、過酷な状況下でも落ち着きを保つことができている理由の一つとみられるという。
 
 「たばこを吸いたい」「息子を抱きしめたい」「日光を浴びたい」などの欲求を満たすのは無理だが、折りたたみ式簡易ベッドやタオル、シャンプー、せっけん、衣服などが毎日届くようになり、「日々生活が改善していることを喜びに感じており、精神的にも健康だ」という。当初、5人ほどがうつの症状を示したが、抗うつ剤などの薬は使わずに改善したという。
 
 米航空宇宙局(NASA)の専門家が、真っ暗な地下で規則正しい生活を送るために照明を使って「昼」と「夜」を人工的に作り出すことを助言したことについて、イトゥラ氏は「光は、精神状態に大きく影響するので、光量のコントロールが必要だ」と話している。