私たちの体を通り抜ける風
村山斉 (45、東京大学「数物連携宇宙研究機構」機構長) (2009年4月7日付 朝日新聞 夕刊 ニッポン人脈記「素粒子の狩人2」)
「あるのかないのかよくわからなかったオバケみたいな素粒子ニュートリノは、太陽で生まれ、1秒間に1兆個くらい私たちの体を通り抜けています。その風を感じた方、いますか?」
参加者を見渡し、笑顔で村山はいう。「おかしいなあ、アメリカでこの質問をすると、手を挙げる人が必ずいるんですが」。会場は爆笑に包まれた。
素粒子物理学の話題に、「ニュートリノ振動」という変身現象がある。村山が説明すると、こんな風になる。
「アイスをあっちからこっちに持って行く間に、ストロベリー味からチョコ味に変わったら驚くでしょ? それが素粒子の世界に起こったんです」
宇宙はどうして始まったの?
宇宙は何でできているの?
宇宙はこれからどうなるの?
村山たちが、IPMUで素粒子物理と数学を駆使して解こうとしているのは、小学生でも持ちそうな素朴な疑問である。
「それは究極の疑問。世界から超一流の研究者を集めれば、解ける」