「死」に向かい合う力

「白状すると、煙草も吸いはじめた。散歩のあとに喫茶店に入り煙草をすわないと、いったい何を好んでこの一日を迎えているのか、わからなくなるからです(笑)。」(松岡正剛 千夜千冊・番外「退院報告と見舞御礼」
 
 松岡正剛が2004年7月7日に「千夜千冊」を良寛の『良寛全集』(上下)で締めくくり、暫くして「退院報告と見舞御礼」と題した記事の中で、自らの胃癌闘病と退院報告に触れたとき、少なからぬ衝撃を受けたことを覚えている。
 
 辺見庸自分自身への審問』は、「脳出血」と「癌」という二重の厄災に襲われながら、切れ切れの体力の中、硬い岩に刻むように高度資本主義=情報社会に生きる自らの「否」を告発し続けた一冊だった。
 
 最近では、文藝春秋2月特別号が、筑紫哲也がん残日録――告知から死まで五百日の闘い』と立花隆×鳥越俊太郎がんと共に僕らは生きる』を掲載した。立花隆はすでに同誌上で自らの膀胱癌の「観察記録」を、膀胱鏡写真付きで紹介している。「ぼくは闘病の話にはあまり興味がない。がんというのは生命現象の最大の謎の一つ。がんって一体何なのかということを知りたい」(立花隆)。ちなみに、この号から佐野眞一が『ドキュメント 昭和天皇の最期』と題する集中連載をスタートさせている。
 

自分自身への審問

自分自身への審問