マヌエル・プイグ 『蜘蛛女のキス』

ブエノスアイレス市刑務所の獄房の一室。ルイス・アルベルトモリーナ(未成年者の猥褻幇助罪により懲役8年を宣告され収監。ゲイ)と、同室者バレンティン・アレーギ・パス(自動車組立工場での騒乱を扇動していた活動家)との徹底した対話による、裏切り(の裏切り)と同性愛の物語。
 
「あなた、映画見たんでしょ」
「いや、見ちゃいない。本当だ。話を続けてくれ」
 
映画の話…「あんたの話に集中できないんだ」「飽きたの?」
「仲間の女のことを考えたい」(バレンティン、p.38)
 
政治犯で捕まったら、絶対医務室に行くはめになっちゃいけないんだ。(p.99)
 
ブエノスアイレス市刑務所第三区所長と被告人・モリーナとの「駆け引き」
所長「まずいことに、モリーナ、えらく圧力がかかってるんだ。大統領筋からなんだ。分かってくれるかね」(p.181)
 
「ずいぶん不思議なラストでしょ、ね?」(p.236)
 
「黒豹女だったらすごく哀れね、誰にもキスしてもらえないんだもの。全然」
「あんたは蜘蛛女さ、男を糸で搦め取る」(p.236)
 
過激派とともに逃亡するつもりでいたか、あるいは過激派に抹殺される覚悟を決めていたか(p.248)
 
アレーギ(バレンティン)の死に至る意識の中の<蜘蛛女>の夢……