橋爪大三郎 『世界がわかる宗教社会学入門』

――人間は誰もが、自分は死ぬと思っている。知っていながら、それでも生きている。
 
パスカルの「気晴らし」
 
尊皇攘夷とは何か
 
 
 本書「あとがき」に、小室直樹博士への献辞(本文中にも言及あり)。その小室著『日本人のための宗教原論』は2000年6月に徳間書店より刊行され、今も版を重ねる隠れたベストセラー。マックス・ヴェーバーの宗教社会学を背景に、例によって歯切れのいい小室節で「宗教とは何か」「一神教とはどういう宗教か」を縦横無尽に語り尽くす(とはいえ、僅か単行本1冊の厚みで、啓典宗教や仏教、儒教の蘊奥を紹介し尽くすことはもとより不可能なのだけど)。
 
 一方、橋爪大三郎の『世界がわかる…』は、小室著『宗教原論』を教科書風に書き起こした小品。東京工業大学での講義をまとめたものなので、浅く広い内容となっている。せめて章ごとの参考文献がもう少し詳細であったら、使い勝手も少しはよくなるのだが。