手つかずの廃炉

チェルノブイリ、27年廃炉手つかず 記者が内部ルポ (www.asahi.com 2013年6月21日23時3分)
 
 史上最悪の原発事故を起こした、ウクライナチェルノブイリ原発4号機の内部に20日、朝日新聞記者が入った。事故から27年がたった今も廃炉作業は見通しがたたず、内部は手つかずのままだ。爆発で壊れた建屋をコンクリートで覆った「石棺」は傷みが激しく、放射能汚染が広がる危険にさらされている。
 
 石棺内部にある4号機の制御室。手持ちの放射線測定器は毎時7マイクロシーベルトを指す。1990年に別の朝日新聞記者が入った時は30マイクロ。4分の1に減った。だが、分厚いコンクリート壁を隔てた先に、爆発事故を起こした原子炉に溶けた燃料がそのまま残る。近づけば即死するほど放射線量が高く、簡単には立ち入れない。
 
 チェルノブイリ原発は今、再び危機にさらされている。崩れかかっている原子炉建屋を80メートルほどの高さの巨大鉄骨で、かろうじて支えている。石棺からむき出しの鉄筋が赤くさびる。放射性物質が外に飛び散らないように封じ込めるので精いっぱいだ。雨水がすき間から入り込み、中の放射性物質と混じり合い、土壌に漏れ出している。
 
 危機を打開しようと、2年後の完成を目指し、4号機を丸ごと覆うドーム形のシェルターを建設中だ。建屋の崩壊で外に放射性物質が飛び散るのを防ぐ。
 
 アレクサンドル・ノビコフ技術担当副技師長は「ゆくゆくは石棺を壊して溶けた燃料を取り出す。だが、工程は決まっていない。100年かかることも想定しなければならない」と話した。
 
     ◇
 
 〈チェルノブイリ原発事故〉 1986年4月に起きた史上最悪の原発事故。4号機で試験運転中に爆発を起こし、原子炉がむき出しになった。発生から10日間で福島第一原発事故の約6倍にあたる520京(京は兆の1万倍)ベクレルの放射性物質を放出し、北半球全体に広がった。事故直後の消火活動で30人以上が死亡。2週間以内に発電所の30キロ圏内の住民11万6千人が強制避難させられた。