加藤シゲアキ『ピンクとグレイ』

 『閃光スクランブル』が話題のNEWS・加藤シゲアキの処女作。「預言詩」としての「ファレノプシスの真実」など、細部にわたって伏線が生かされており、重層的なカタストロフィーが襲いかかる中盤から終盤にかけての疾走感は圧巻である。
 
 もし、この小説の中心はどこにあるのかと問われれば、主人公の恋人が語る
ということはね、吸収されなかった色を私たちは見ているの。つまるところ、その物質が嫌って弾かれた色が私たちの目に映っているのよ」(p.101)
というセリフが挙げられるだろう。
 とにかくこの小説は、凄まじい「自意識の小説」だと言える。「僕は僕が嫌った色を映し続けていたのかもしれない。そして僕は透明になる」(174ページ、蓮吾の遺書)。姉・唯の運命的な設定に関する妥当性など、設定のいくつかに説得力を欠く嫌いはあったものの、ジャニーズの肩書きなくして十分に鑑賞に堪えうる作品だと思う。