Iron Lady

「鉄の女」サッチャー元英首相死去 87歳 (www.asahi.com 2013年04月08日22時10分)
 
 英国のマーガレット・サッチャー元首相が8日、脳卒中のため死去した。87歳だった。1979年に英国で初の女性首相に就任。以来、11年余にわたり保守党政権を率いた。市場原理を重んじて「小さな政府」を志向し、国民に「自助」の精神を求めた。その経済政策は「サッチャリズム」と呼ばれ、英国経済を回復させたが、反発も招いた。妥協を許さぬ姿勢から「鉄の女」と称された。
 
 サッチャー氏の長男らが8日、「今朝、安らかに亡くなった」と、スポークスマンを通じて発表した。
 
 サッチャー氏は昨年10月、ロンドンのオイスターバーであった自身の誕生パーティーに長男夫妻と出席するなど、元気な姿を見せていた。しかし、最近は体調を崩しがちで、昨年12月には膀胱腫瘍の摘出手術を受けていた。
 
 首相就任後、電話、ガス、航空会社など国有企業の民営化や、金融部門で規制緩和をはかる「金融ビッグバン」政策など大胆な構造改革を断行。米国の「レーガノミクス」や日本の中曽根行革の手本となった。97年からのブレア、ブラウン両労働党政権が進めた「ニューレーバー(新しい労働党)」路線にも大きな影響を与えた。
 
 外交では対ソ強硬姿勢を貫き、保守党党首時代に行った演説から、ソ連メディアから「鉄の女」と呼ばれた。82年に発生したフォークランド紛争でも、アルゼンチン軍の侵攻に対して、政府内の慎重な意見を押し切って英艦船の派遣を決定。強力な指導力を内外に印象づけた。
 
 01年に脳卒中で入院し、翌年、事実上の政界引退を発表。05年12月には体調不良で一時入院し、健康不安が伝えられていた。08年には長女キャロルさんが著書で、認知症を患っていることを明らかにした。
 
サッチャー元英首相の年表
 
1925年10月 英中部グランサムに生まれる
47年 オックスフォード大卒(化学専攻)
51年 デニス・サッチャー氏と結婚
59年 保守党から下院議員初当選
70年 ヒース政権の教育科学相に(〜74年)
75年 保守党初の女性党首に
79年 総選挙に勝利して英国初の女性首相に
80年 米国にレーガン政権誕生
82年4〜6月 フォークランド紛争
83年 総選挙に大勝、第2次政権。国有企業の民営化や各種規制緩和、金融改革などに着手し次々と断行
84年 北京で「香港問題に関する中英共同声明」に調印。香港は97年7月に返還
87年 総選挙で勝利、第3次政権。任期終盤で人頭税導入に世論が強く反発、支持にかげり
89年 ベルリンの壁崩壊、東西冷戦終結
90年 首相辞任。首相在位11年余は、20世紀の英首相として最長。メージャー政権誕生
92年 上院議員
97年 総選挙で労働党圧勝、ブレア政権誕生
2002年 脳卒中の療養を理由に事実上の政界引退
07年 存命中の元首相としては初めて英国会議事堂内に銅像が建立
08年 長女キャロルさんが回想録を出版。母の認知症を公表