切迫した危険はあるか?

立川断層の謎に迫れ 文科省研究班、本格調査をスタート (www.asahi.com 2013年02月24日15時52分)
 
 首都圏に震度7の揺れをもたらす恐れがある立川断層帯の本格的な調査に、文部科学省の研究班が乗り出した。この断層、注目を集めているものの、実はわからないことだらけだ。どんな揺れや地形変化が起きるのか。そもそも本当に切迫した危険があるのか――。
 
 東京都武蔵村山市で6日、工場跡地に掘った長さ250メートル、深さ10メートルの巨大な穴が公開された。壁のほぼ中央に丸い泥色の塊が縦に並ぶ。「断層がずれた痕跡です」と東京大学地震研究所の佐藤比呂志教授が説明した。
 
 これまで立川断層は上下に動く「逆断層」とされてきたが、この場所では横に動く「横ずれ型」とみられることがわかったという。
 
 断層のタイプは基本的な情報の一つで、それによって地形の変化や揺れ方も変わってくるのに、はっきりしていなかった。その他の地点や深い場所がどうなっているのかもまだわからず、調査を続ける。
 
 特に気になる地震の切迫性も、評価が揺れている。
 
 東京都の1998年の調査では「5千年間隔で動く活断層で、2千年前に活動があった」。活断層では最後の活動から経過した時間によって、次の活動が近いかどうかを推定する。都の結果によれば「大丈夫そうだ」と受け止められる。
 
 ところが2003年、政府の地震調査研究推進本部は「1万〜1万5千年間隔で動き、1万3千年前より以前に活動した」と発表。長年、動いていない「危険な断層」になる。さらに、東日本大震災後には「地震発生確率が高まる恐れがある」とした。
 
 しかし、都も国も、地層が最後にずれた年代を示す直接の証拠をおさえたわけではない。地震本部も「データが少なく、信頼性が低い」と認めている。
 
 地震本部は09年に、人口が多く影響が大きい活断層を選び、重点的に調査する方針を打ち出した。立川断層の調査は、警固断層(福岡県)や上町断層(大阪府)などに続くものだ。
 
 研究班は今後、地下構造などを詳しく調べ、揺れの予測もする。地元の東京都立川市の防災担当者は「これまではデータが少なかったので、判断が分かれてもしかたない。今度はしっかり結果を出してほしい。わからないことだらけで不安でいるより、敵を知り、正しく恐れたい」と期待する。
 
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 〈立川断層帯〉 埼玉県飯能市から東京都府中市まで走る長さ33キロの断層帯。活動すればマグニチュード7・4程度の地震が発生し、首都圏で大きな被害が出ると推定される。東京都は最悪のケースでは、2582人の死者、8万5千棟以上の建物被害を予測している。