ストレスを測定する

ストレス度、唾液ですぐ測定 被災者ケアに活用期待 (www.asahi.com 2013年02月04日17時30分)
 
 微量の唾液で、慢性的なストレスの度合いを約10分で調べられる測定器を、半導体メーカーのローム京都市)と岩手大工学部の山口昌樹教授(生体医工学)らが開発した。東日本大震災で被災した子どもたちに協力してもらった実証実験で効果を確認。多くの被災者たちの心のケアに役立つと期待されている。
 
 唾液や血液に含まれ、慢性的なストレスがあると増減幅が変わるホルモン「コルチゾール」を測る。円盤状の検査チップに唾液をセットして高速回転させ、直径100ナノメートル(ナノは10億分の1)未満と極細の管を通すことでコルチゾールだけを分離。試薬を使って発光させ、光量を計測してストレスの度合いを調べる仕組みだ。
 
 極細の管や、光を正確に読み取るセンサーづくりにはローム半導体部品の製造で培った加工技術が生きている。
 
 先端技術を使って復興を支援する経済産業省の事業を使って2012年7月と10月の2回、岩手県沿岸部の中学生約60人を調べた結果、医師に慢性的なストレスを抱えていると診断された生徒は数値の減りが激しかった。実験結果は今年7月、大阪市で開かれる国際学会で詳細を発表する。
 
 従来は唾液中の消化酵素「アミラーゼ」で測定していたが、瞬間的なストレスで大きく数値が変動するため、正確な測定が難しかった。一方、唾液にごく微量しか含まれないコルチゾールは不純物を取り除いて試薬と反応させるのが難しく、測定も4〜5時間かかっていた。
 
 今回の測定器は25センチ角で、重さは約5キロ。1回の測定も10分程度で済む。今後、医療機関などとの実証実験を繰り返し、1回の測定で確実にストレスの有無を判断できるよう改良。17年度の商品化を目指す。価格は1台50万円程度に抑え、被災地の学校や自治体、企業の健康管理部門などで使ってもらうよう売り込む考えだ。
 
 震災支援ネットワーク埼玉と辻内琢也・早稲田大准教授が12年、福島県の被災者の心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状の度合いを調べたところ、回答した75人の約7割で重度のPTSDの可能性があることがわかった。東日本大震災の被災地では、生活の不安や疲れから、うつ病やPTSDになる被災者へのケアの重要性が高まっている。
 
 被災地での歯科検診を通じ、唾液とストレスの関連を調べている岩手医科大歯学部の八重柏隆教授は「自分でも気づかずにうつ病になったり、PTSDで苦しんだりする被災者は多い。気軽にストレスをチェックできれば、重症化する前に医師の診断や治療を受けることができる」と期待する。