断定するのは、専門的でない?

中国「全くのでたらめだ」 米サイバー攻撃にちらつく影 (www.asahi.com 2013年02月03日12時00分)
 
 米ニューヨーク・タイムズ(NYT)などが、中国からサイバー攻撃を受けたと相次いで明らかにした。米政府も懸念を表明するが、中国政府は全面否定。中国国内では、一部の海外メディアのニュースサイトの閲覧ができないといった状況が強まっている。
 
 NYTによると、ハッカーが同紙内部のパソコンに侵入したのは昨年9月13日。主な狙いは、温家宝(ウェンチアパオ)首相の親族の27億ドル(約2470億円)に上る蓄財についての記事を同10月に書いた上海支局長らのメール内容だったとされる。
 
 NYTは専門家の見方として「中国のハッカーは2008年から、欧米のジャーナリストの情報源を特定しようと、攻撃対象にしてきた」と伝えた。
 
 ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)も1月31日、被害を受けていたと報道。昨年半ばにFBI(米連邦捜査局)からの通告で知ったといい、北京支局の記者たちの情報が対象となっていた。ワシントン・ポストも2日、同様の被害を受けていたことが明らかになった。セキュリティー関連のブログで最初に報じられ、ポスト紙も「11年に発覚し、対処もできた」と認めたが、詳細は明らかにしていない。ただ、08年ごろからハッカーがアクセスしていたという報道もあり、長期間にわたっていた可能性もある。
 
 1日には米ツイッター社が、米国に設置されているサーバーシステムが「サイバー攻撃」をしかけられたと発表。中国との関連は不明だが、約25万人分のユーザーネームやメールアドレス、パスワードなどの個人情報が不正に読み取られた可能性があるという。
 
 オバマ政権は、中国を発信源とするサイバー攻撃に警戒を強める。
 
 AP通信によると、クリントン国務長官は1月31日、「米国はこのような不法侵入から政府や民間部門を守るために行動を起こすことを、中国に対して明確にする必要がある」と強調。国務省のヌーランド報道官は1日、民間企業への攻撃も含め、この問題を引き続き米中戦略・経済対話などを通じて中国側に提起する考えを示した。
 
 これに対し、中国政府は全面否定の姿勢だ。
 
 「中国政府や軍がハッカーの攻撃に関与しているとは、全くのでたらめだ」。中国外務省の洪磊副報道局長は1日の会見で、強い口調で反論。「(中国の攻撃と)断定するのは、専門的でない」と主張した。
 
 ただ、昨年11月の共産党大会を目前に控えた時期のNYTによる温首相の親族報道が、中国内で大きな衝撃を持って受け止められたのは確かなようだ。
 
 NYTのニュースサイト(英語版)はこのころから、中国内での接続ができなくなった。北京で翻訳スタッフら数十人の体制を組み、昨年6月に新設した中国語サイトも開けない。当局の規制をくぐり抜けて海外サイトを閲覧できるソフトも、党大会前からは十分に使えなくなっている。
 
 中国当局が警戒を強めるのは、中国の指導者に対する海外メディアの報道が国民の目に触れ、体制の安定が揺るがされること。サイバー攻撃問題で、米中関係が決定的に対立するような事態は、中国側も望んでいないとみられる。
 
 発足したばかりの習近平(シーチンピン)体制は、国内の権力基盤を固める時期にある。中国外務省の報道官はNYTを非難しつつ、「(米中が)共にウィンウィンとなる新たな大国関係を築きたい」とのメッセージも米国向けに繰り返し強調している。