目印を叩け

がん作る細胞の目印発見 京大、副作用軽い治療薬に期待 (www.asahi.com 2012年12月7日06時33分)
 
 がんを生み出す「がん幹細胞」の目印を京都大チームが見つけた。マウスの大腸がんでこの目印がついた細胞だけをつぶしたら、がん全体のほとんどが消えた。少ない副作用でがんだけを滅ぼす治療薬の開発に役立つという。米科学誌ネイチャージェネティクス電子版で3日、発表した。
 
 神経や血液といった細胞には、自分自身が増えながら新しい細胞を生む幹細胞がある。がんにも同様にがん幹細胞があり、薬や放射線への抵抗力が強い。抗がん剤などで攻撃してもがん幹細胞が生き残り、そこから普通のがん細胞が増えて再発につながってしまうと考えられている。
 
 がん幹細胞を集中攻撃できれば、がんを根絶やしにできると予想されるが、これまで見つかったがん幹細胞の目印は正常な幹細胞にもあるため、それを目標に攻撃すると強い副作用が出る問題があった。
 
 京大の千葉勉教授(消化器内科学)らは、神経の成長などにかかわるDclk1というたんぱく質に目をつけ、マウスの大腸がんで調べた。すると、このたんぱく質があるがん細胞はがん幹細胞で、がんでない普通の幹細胞にはみられなかった。がん幹細胞と正常な幹細胞を見分けられる目印は初という。
 
 遺伝的に大腸がんができるようにしたマウスでDclk1のある細胞だけを壊すと、5日後にはがん幹細胞を含むほとんどのがん細胞がなくなった。
 
 Dclk1は人間とマウスで似ているので、これを標的に抗体薬などで攻撃すれば副作用の少ない治療が期待できる。肝臓がんや膵臓がんでも同様の目印に使える可能性があるという。