中東に広がるコロナ新種ウイルス

新種ウイルス、中東で新たに死者2人 厚労省が注意喚起 (www.asahi.com 2012年12月5日18時54分)
 
 中東で確認された重症急性呼吸器症候群(SARS)と同じ「コロナウイルス」の新種ウイルスの感染で、新たに2人が死亡した。世界保健機関(WHO)が発表した。これで感染者は9人、死者は5人となった。厚生労働省は、都道府県などに、中東から帰国し、高熱とせきなどがある患者がいれば、すぐに報告するよう通知した。
 
 患者の報告は先月末までに、サウジアラビア5人(うち死亡3人)、カタール2人(同0人)、ヨルダン2人(同2人)。いずれも急性の呼吸器症状を訴えた。サウジアラビアの5人のうち3人は家族。感染ルートや人から人への感染力はまだ不明で、WHOも渡航制限はしていない。
 
 コロナウイルスは通常、せきや鼻水といった軽症の風邪を起こすありふれたウイルス。病原性が強くなったSARSもこの一種で、2002年11月以降、約8千人が感染し774人が死亡した。国立感染症研究所(感染研)によると、重い症状を起こす新種のコロナが見つかったのは、SARS以来だという。
 
 日本獣医生命科学大学の田口文広教授(感染症)は「十分な注意が必要だが、まだ、少数の患者しか出ておらず、感染力は弱いのではないか」と指摘する。
 
 ただ、SARSも当初は数人の患者報告があったが、約2カ月たってから一気に広がった。サウジアラビアでは10月、イスラム教の聖地メッカで大巡礼(ハッジ)があり、世界各国から200万人以上が訪れている。
 
 感染研の松山州徳室長は「すでに中東全域に広がっている可能性がある。その他の地域に広がらないか、注意深く監視する必要がある」と話した。