退屈でつまらない賞

「平和賞の品位汚した」 EU受賞に欧州各国から批判 (www.asahi.com 2012年10月13日16時02分)
 
 欧州連合(EU)のノーベル平和賞受賞が決まったことに、欧州各国で批判の声が相次いでいる。平和賞のおひざ元ノルウェーでは、市民らが選考委員長の辞任を要求。ギリシャでは「賞の品位を汚した」との声すら出ている。
 
 20以上の平和団体を束ねる「ノルウェー平和評議会」は声明で、EU域内の民意がEUの政策決定に反映されなくなり、社会格差の拡大が人権侵害を助長していると指摘。「政治的な賞」だとして、ノーベル賞委員会のヤーグラン委員長に辞任を迫った。
 
 ノルウェーは、前身の欧州共同体(EC)を含めるとEU加盟を国民投票で2度否決した。一方、元首相のヤーグラン氏はノルウェーの加盟を推進した親EU派で、それが「委員長の政治信条で決めた」(地元記者)との疑惑を招いている。
 
 欧州危機の震源地のギリシャでも不満が渦巻く。反緊縮を掲げて支持を伸ばした野党、急進左翼進歩連合の広報担当は英紙に対し、「EUの受賞は平和賞の品位を落とした。ギリシャは毎日が戦時のような状態だ」と切り捨てた。
 
 同賞の候補にもなっていたロシアの人権団体「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」のアレクセーエワ代表は地元メディアに対し、「2009年は大国の大統領(オバマ米大統領)に贈り、今回はEU。この賞が依拠する理念の退化だ。世界の社会活動家たちにとって、退屈でつまらない賞になった」と失望をあらわにした。
 
 ロシアで反プーチン集会に携わってきた団体「人権のために」のポノマリョフ代表も「ノーベル平和賞は、世界の現実の戦いの中で生命のリスクを抱えながら活動している人々に贈るべきだ。役所にあげるものではない。極めて政治的な誤った決定だ」と批判した。
 
 これに対し、加盟国の大半の首脳らは受賞を歓迎したが、沈黙を貫いているのが英国のキャメロン首相だ。昨年12月には、EUの財政規律の強化を義務づける協定への参加を加盟27カ国で唯一拒んだ。ユーロ危機で与党保守党内のEU脱退論が勢いづいていることに配慮し、あえて「無視」したとみられる。
 
 英外務省は授賞発表の数時間後に、「EUが欧州の平和と和解促進に果たした歴史的役割を認めた賞」との声明を発表。英語でわずか二つの短い文章だった。