ノーベル平和賞はEU

ノーベル平和賞はEU 国境超えた統合の「実験」評価 (www.asahi.com 2012年10月12日18時55分)
 
 ノルウェーノーベル賞委員会は12日、2012年のノーベル平和賞を、欧州連合(EU)に贈ると発表した。欧州の政府債務(借金)問題が世界経済に不安を広げる一方で、国家間の和解や国境を超えた統合の「実験」を続けてきたEUに光を当てた。
 
 委員会は授賞理由を「前身の時代も含め60年以上にわたって欧州における平和と和解、民主主義と人権の向上に貢献した」とした。
 
 27カ国の共同体への授賞は異例の決定といえる。欧州は第2次世界大戦後、多数の死者を出した二つの世界大戦への反省から、国境を越えた政治・経済の統合を進めてきた。一方、中東和平、グルジア紛争など域外の対立や紛争に調停役として関与し、武力行使ではない話し合いによる解決を提示してきた。
 
 EUに至る最初の出発点は、ベネルクス3国と、フランス、当時の西ドイツ、イタリアが設立した「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)」。戦争に不可欠な鉄鋼・石炭を各国で共同管理することで、二度と欧州で戦火を起こさない目的からだった。
 
 1993年にEUになった後は、関税を廃して単一市場を完成し、02年に単一通貨ユーロの流通を始めた。89年のベルリンの壁崩壊以降は、東西ドイツの統合を支援。旧共産圏の中・東欧の国々も加わり、27カ国にまで拡大した。
 
 加盟国は共通の外交・安全保障政策をとっている。加盟国の3分の2は北大西洋条約機構NATO)にも加盟するが、武力ではなく対話での紛争解決を進めるアプローチに力点を置くのがEUの特色だ。近年はEU域外の紛争・災害時の緊急人道支援や復興支援に力を入れており、東ティモールコソボなどで支援活動を続けた。08年にロシアとグルジアが武力衝突した際は、当時のEU議長国フランスのサルコジ大統領が調停に入った。外交・安全保障上級代表は、イラン核開発をめぐる6者協議で調整役を務めている。
 
 賞金は800万スウェーデンクローナ(約9500万円)。授賞式は12月10日にオスロである。