ノーベル物理学賞に米仏2氏

ノーベル物理学賞に米仏2氏 量子物理学の発展に貢献 (www.asahi.com 2012年10月9日21時11分)
 
 スウェーデン王立科学アカデミーは9日、今年のノーベル物理学賞を、仏高等教育機関コレージュ・ド・フランスのセルジュ・アロシュ氏(68)と米国立標準技術研究所のデビッド・ワインランド氏(68)の2人に贈ると発表した。
 授賞理由は「量子システムの計測と操作を可能にした実験手法の開発」。
 
 量子物理学によると、直径10億分の1メートル以下という非常に小さな原子や、光などの電磁波の粒(光子)では、複数の状態が重ね合わさることがある。重ね合わせの状態は、超高速コンピューターなどに応用できることが知られている。
 ワインランド氏は1990年代、電荷を帯びた原子に光を当てることで、重ね合わせの状態を保持させることに成功。これによって重ね合わせの状態がどのようにふるまったり、壊れたりするかを詳しく研究することが可能になった。
 一方、アロシュ氏はワインランド氏の逆で、原子を使って光子の状態の重ね合わせを操作したり計測したりすることに成功した。
 
 ワインランド氏のグループは研究を発展させ、ベリリウムイオンの重ね合わせの状態を使ってコンピューターの計算素子を試作し、実際に動かし、95年に論文を発表した。
 これらの技術はコンピューターのほか、誤差が10京分の1秒という極めて高精度の時計などへの応用も期待されている。
 
 授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金は、欧州の経済危機の影響で今年から2割減額されて800万スウェーデンクローナ(約9400万円)を2人で分ける。
 
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 〈デビッド・ワインランド氏〉 68歳。米国籍。米カリフォルニア大バークリー校卒。1970年、ハーバード大で博士号取得。現在、米国立標準技術研究所フェロー。2010年、ベンジャミン・フランクリンメダル。
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 〈セルジュ・アロシュ氏〉 68歳。フランス国籍。モロッコカサブランカ生まれ。フランス高等師範学校を卒業後、米ハーバード大客員教授やパリ第6大学教授などを経て、高等教育機関コレージュ・ド・フランス教授。