体当たりで、情熱的なすばらしい人生

大滝秀治さん、最後まで「舞台に立ちたい」 (www.asahi.com 2012年10月5日21時58分)
 
 劇団民芸で中心人物として活躍し、映像では人生の哀歓をにじませた名脇役が、静かに「退場」した。2日に87歳で死去した俳優で文化功労者大滝秀治さんに対し、劇団の後輩らから惜しむ声が寄せられた。
 
 大滝さんが共同代表を務めた劇団民芸は5日夕、東京都内で会見を開いた。演出家で義理の息子の山下悟さんによると、今年2月に肺扁平上皮がんが見つかり、6月に出演予定だった舞台を降板。自宅や病院で治療を続けた。今月1日夜、大滝さんは自宅で家族と夕食をとり、酒も飲んだ。2日午後に体調が急変し、何回か大きく呼吸をした後、静かに息をひきとったという。
 
 闘病中の枕元には、舞台の台本をいつも置いていた。色紙に墨で「また芝居をやりたい」などと書き、復帰への意欲を最後までにじませた。日色ともゑさんは、10日前に大滝さんから手紙をもらった。「もう一度舞台に立ちたい」と書いてあった。「体当たりで役作りをする、情熱的な鉄砲玉。現役のまま大往生された、すばらしい人生」
 
 ひょうひょうとした表情と甲高い独特な声で、晩年にテレビCMで人気となったが、俳優としては遅咲きだった。樫山文枝さんは、売れていなかったころの目が忘れられない。「絶対このままじゃ済まないぞと訴えていた。自分の演技を確立させるために並々ならぬ努力をしていた」と振り返った。