レバノンの法王

ローマ法王レバノン到着 中東全域で緊張高まる中 (www.asahi.com 2012年9月14日21時04分)
 
 ローマ法王ベネディクト16世が14日、中東のレバノンに到着した。隣国シリアの内戦に加え、イスラム教の預言者ムハンマドを侮辱する映像作品に端を発した緊張が中東全域で高まる中での訪問だ。16日まで滞在し、ミサなどで信教の自由と平和の大切さを訴える。
 
 法王はこの日午後、特別機で首都ベイルートに着いた。空港ではスレイマン大統領らとともに各宗派の代表が出迎えた。
 
 レバノンでは、イスラム教徒とキリスト教徒が衝突した内戦が15年以上続いた後、各宗派に国会の議席を割り当てるなどして融和が図られている。法王は「レバノンの人々がみな共に暮らせていることは、中東全体、そして世界中に向けて、一つの国の中で多様な宗教が共存できるという証拠になる」と述べた。
 
 法王は訪問中、大統領や首相、各宗派の代表らと会談するほか、ベイルートで大規模なミサも開く。
 
 バチカンによると、中東16カ国・地域の総人口約3億5600万人のうち、キリスト教徒は約2千万人と5.6%に過ぎない。アフガニスタンイラクでの戦争が泥沼化し、イスラム過激思想が広がる中で、教会への襲撃も相次ぎ、信徒の減少につながっている。
 
 法王は2009年5月、ヨルダン、イスラエルパレスチナ自治区を歴訪。中東各地でのキリスト教徒の迫害を問題視してきた。10年10月には中東の司教を呼び集めてイスラムユダヤ教との共存を訴える声明を出した。
 
 レバノンでは今、シリアからの避難民が流入し、北部では小規模な衝突も起きて緊張が高まっている。
 
 法王の日程には、防弾車両から沿道の市民にこたえる予定もある。事前の記者会見では、警備について懸念する質問も出た。報道官は「訪問の中止を検討したことはない」「地元当局が万全の態勢を敷き、あたたかな雰囲気の中で迎えられると確信している」と述べた。