放射線を予防する

高線量浴びたマウス「生存率3倍」の物質開発 産総研 (www.asahi.com 2012年9月5日08時51分)
 
 極めて高いレベルの放射線を浴びても、注射をすれば生存率が3倍に向上――。そんな作用をもつ物質を、産業技術総合研究所茨城県つくば市)の研究チームが開発し、動物実験で効果を確認した。6日から東北大で始まる日本放射線影響学会で報告する。
 
 この物質はたんぱく質の一種の「FGFC」。マウスに強い放射線(6千ミリシーベルト相当)を当てて実験した。2時間後に腹部にFGFCを注射したグループは、しなかったグループに比べ、20日後の生存率が3倍に高まることが分かった。
 
 強い放射線を浴びると、腸の粘膜をつくる幹細胞が死滅して生命に危険が及ぶが、FGFCは何らかのしくみでこの幹細胞の死滅を防いだり、増殖を促したりするらしい。
 
 研究チームは、放射線を浴びる前に注射をした場合もマウスの生存率が高まることから、FGFCには治療だけでなく予防の効果もあると結論づけた。
 
 実験で照射した放射線のレベルは、原発敷地内の通常の作業で浴びる線量よりもはるかに高いが、原子力事故の際に現場にいれば遭遇し得るレベルで、研究チームは「今回の成果を応用して薬の開発につなげ、将来いざというときに役立てられるようにしたい」という。研究チームの浅田眞弘・産総研主任研究員は「安全性や副作用を調べるため、今後さらに動物実験を進めたい」と話している。