自立した音楽批評

音楽評論家の吉田秀和さん死去 98歳 (www.asahi.com 2012年5月27日21時21分)
 
 日本で初めて本格的なクラシック音楽批評の方法を確立した音楽評論家で、文化勲章受章者の吉田秀和さんが、22日午後9時、急性心不全のため神奈川県鎌倉市の自宅で死去した。98歳だった。葬儀は親族で営まれた。後日、お別れ会を開く予定。喪主は長女清水眞佐子さん。連絡先は水戸芸術館(029・227・8111)。
 
 1971年から本紙文化面の「音楽展望」の執筆を続けてきた。
 
 東京都生まれ。東京帝国大(現・東京大)仏文科卒業後、雑誌に連載した「モーツァルト」で評論活動を開始。技術論や人間論に偏した先行世代の批評に反発し、芸術独自の立場から音楽をとらえる「自立した音楽批評」を生み出した。美術、演劇、文学など幅広い知識に裏打ちされた魅力的な表現で支持を得、音楽界に多大な影響力を持った。
 
 日本の音楽評論家としては異例の個人全集(白水社)で、75年の第2回大佛次郎賞を受賞。全集は2004年に24巻で完結した。
 
 実践家としても48年、井口基成、斎藤秀雄とともに、桐朋学園音楽学部の母体となった「子供のための音楽教室」を創設、音楽の早期教育に指導的役割を果たした。57年に柴田南雄らと「二十世紀音楽研究所」を設立するなど、現代音楽の紹介にも尽力した。
 
 90年に開館した水戸芸術館の初代館長に就任し、小澤征爾さんを音楽顧問とする水戸室内管弦楽団を設立。91年には芸術評論を対象とした「吉田秀和賞」も創設された。
 
 「マネの肖像」「私の好きな曲」など著書多数。91年朝日賞、06年文化勲章