ノーベル文学賞はT・トランストロンメルに

ノーベル文学賞スウェーデンの詩人に (www.asahi.com 2011年10月6日21時12分)
 
 スウェーデン・アカデミーは6日、今年のノーベル文学賞を、スウェーデンの詩人、トーマス・トランストロンメルさん(80)に授与すると発表した。授賞理由を「凝縮された透明感のある描写を通して、現実に対する新たな道程を示してくれた」と説明した。
 戦後のスウェーデンを代表する詩人の一人として、国際的にも知られる。作品は60カ国語以上に翻訳されている。
 
 ストックホルム大で文学や心理学を学び、若者向けの更生施設に心理学者として一時勤めた。1954年の第1詩集「17編の詩」で注目を集め、「路上の秘密」(58年)、「半ば出来上がりの天国」(62年)など、ほぼ4、5年おきに着実に詩集を発表してきた。
 
 短い自由詩のなかに、神秘的な世界を凝縮された言葉でイメージ豊かに表現し、「隠喩(いん・ゆ)の巨匠」とも呼ばれる。74年には会話形式の「バルト海」、83年には散文詩集「荒れた広場」を出した。90年、脳卒中で倒れたが、93年に回想記「記憶がわたしを見る」、96年には病気の詩人の心象風景を描いた詩集「悲しみのゴンドラ」を刊行し、日本でも99年に邦訳が出た。
 
 「悲しみのゴンドラ」の翻訳者でスウェーデン在住のエイコ・デュークさんは「日常的な言葉を使いながら比喩表現が豊かで、作風は俳句に似ている。本人も俳句のファン。右半身の不随と闘いながら、今も少しずつ詩作は続けている。明るくゆったりした人柄で、まさに国民的詩人です」と話した。