内田樹+中沢新一+平川克美 『大津波と原発』

 本書は池田信夫『3.11後 日本経済は…』と同じ朝日新聞出版から上梓された本だが、書かれている内容も方向性も全く異なる一冊だ。
 
 先ごろ亡くなった人類学者のレヴィ=ストロースが「日本人はブリコラージュを駆使しながら、物づくりをする素晴らしい民」と言ってくれていました。
 しかしですね、事故を起こした原発に対してまで、ブリコラージュをやっちゃうというところがですね、はしなくも日本人とは何者なのかということを露呈させています。
 (中沢、p.19)
 
 
 第七次エネルギー革命(注:原子力とコンピューターの開発)のいちばんの問題点は、これが大量生産と大量消費による経済成長をもとめる産業界と結びついて、ひとつの盲目的なイデオロギーを形成してきたということなんですね。
 それは単一化をすすめるモノイデオロギーを形成しますが、それはモノテイズム(一神教)の思考法の変形版で、単一原理を蔓延させていこうとしています。
 (同、p.61)
 
 
 キーワードは「ブリコラージュ」と「一神教」、そして「緑の党」。エネルギー政策や復興策に関して具体的な示唆や言及、批判の展開がなされている訳ではない。リラックスした鼎談形式(Ustream配信の書き起こし)なので、個々の表現にはやや大ぶりなところを感じさせるが、内田樹中沢新一ならではのレトリックから来る思索の面白さを味わうことができる。