池田信夫ほか 『3.11後 日本経済はこうなる!』

 特に震災復興に際しては、昔の街を復旧するのではなく中核都市に機能を集中し、インフラや医療・福祉などの整備を効率的に行う「コンパクトシティ」の考え方が重要です。戦後の日本では、全国のすみずみまで「あまねく公平」なインフラ整備を行ってきましたが、今後はそれは続けられません。
 山間部や離島まで公共的なユニバーサルサービスを行うことも無理になるので、不便な地域に住んでいる人には移住してもらうしかない。特に被災地の復興に際しては、人の住む地域と住まない地域を行政がゾーニング(地域区分)する都市計画を立てる必要があります。
 (p.200)
 
 震災から3か月が過ぎたにもかかわらず、被災地ではインフラ整備はおろか仮設住宅建設にも遅れが生じるなど、未だ復旧の道のりが見えない状態が続いている。何よりも、政治が与野党ともに政局をめぐる泥仕合に縺れ込み、ガバナンスに「哲学」が見えてこない。復旧なのか、復興なのか。そこには日本独自の「タブー」の問題も見え隠れしている。
 
 アルファブロガーとしても著名な経済学者・池田信夫は、本書で「供給制約と財政危機」「エネルギー戦略の岐路」「スマートグリッドで実現する次世代の電力網」「震災復興をどう進めるか」というテーマについて、それぞれ小黒一正、澤昭裕、村上憲郎小幡績と対談、検討している。
 震災は財政破綻確率を2倍に跳ね上がらせた、「脱原発」から論を始めると袋小路に陥る、あまねく公平ではなく「選択と集中」が必要――など、震災をめぐるガバナンスを国民が評価する上での一つの「見方」が示されている。