防護服にみる「正義」

 27日付の報道によると、福島第一原発の復旧作業中に高レベルの放射線を浴び、千葉市放射能医学総合研究所に入院している作業員3人の全身状態に問題はなく、28日にも退院する見込みだという。この報道が正確なものであるならば何よりだ。
 
 放射線による深刻な被曝事故で直ちに思い起こされるのは、11年半前の1999年9月30日、東海村の核燃料加工施設で発生したJCO臨界事故だ。このとき、多臓器不全で亡くなられた2人の作業員は、一人が推定16〜20シーベルト、もう一人が6〜10シーベルト放射線を浴びたとされる。しかし、今回の事故で作業員が浴びた放射線量は、入院当初の検査では約2〜6シーベルトということで、素人目にみて楽観的な数値とはとても思えない。これほど短期間の入院で退院措置を取る合理的な意味はあるのだろうか?

「この防護服で大丈夫?」 放射性物質広がり作業員不安 (www.asahi.com 2011年3月27日12時0分)
 
 被曝(ひばく)事故で東電の安全管理体制が不安視されている中、福島第一原発で復旧を進める作業員たちが「自分が身につけている防護服が、その場の放射線量に合ったものなのか自信がもてない」と訴えていることが、東電関係者の話で分かった。「高いレベルの防護服が不足しているのではないか」との疑問を述べる東電協力企業の社員もいるという。
 
 東電によると、原発内は放射能汚染の危険性に応じて、低い「A」から高い「C」まで3段階に分かれており、作業員は各区域に応じた防護服を着用することになっている。
 復旧作業でも、最も危険性が高い屋内の「C区域」で作業をする場合は、Cレベルの防護服を着用している。ただ、現在の敷地内は相次ぐ事故で放射性物質が広がり、原子炉建屋などの内部だけではなく、通常は安全とされている屋外や関連施設も危険な状態になっているという。混乱する現場で放射線の状態の事前チェックが行き届かない状態も続いている。作業員らは線量計を身につけているが、「この場所でもCレベルの防護服を着るべきではないか」「本当に大丈夫なのか」と疑問を感じながら、作業を進めている人が多いという。
 
 C区域の防護服は、放射線管理区域専用のももひきのような下着と靴下をはき、その上にグレーにオレンジが入った化学繊維の服を着る。さらに「特殊保護衣」という使い捨ての紙製のカッパ(白色)か、完全防水性のビニール製のカッパ(黄色)のどちらかを状況に応じて重ね着する。マスクは、空気中の放射性ヨウ素を吸い込まないため、フィルターにヨウ素を吸着する活性炭が入ったもので顔全体を覆う。酸素が薄い場所などでの作業では、酸素ボンベを背負って入ることもある。