「安寧と静謐」を超えて

応神陵古墳への立ち入り調査許可 古代天皇陵で初 (www.asahi.com 2011年2月18日18時32分)
 
 宮内庁は17日、第15代応神天皇の陵墓に指定している応神陵(誉田御廟山)古墳(大阪府羽曳野市)への立ち入り調査を、日本考古学協会など考古・歴史16学会に許可すると発表した。24日に実施される。学術調査の要望に応え、宮内庁では2008年の五社神古墳(神功皇后陵)から年1回の調査を許可してきたが、古代天皇陵への立ち入りを認めたのは初めて。
 
 今回、調査が許可されたのは、墳丘本体を巡る濠を取り囲む内堤部分。市教委などの資料によると、墳丘と内堤・外堤は葺き石で覆われ、円筒埴輪列が配置されていたらしい。立ち入り調査で発掘や採集はできないが、推定約2キロの内堤を歩いて一周し、形状などを観察する。墳丘本体の立ち入りは「濠を渡るための安全性が確保できていない」として認められなかった。
 
 応神陵古墳の推定築造は5世紀前半。墳丘部は全長425メートル、高さ36メートルの国内第2位の前方後円墳。墳丘の土の総量はダンプカー17万台分。表面積や体積では、世界最大級の墳墓とされる大山(仁徳陵)古墳(堺市、墳丘長486メートル)を抜き、国内最大になる。世界遺産暫定リスト入りした「百舌鳥・古市古墳群」の一つ。被葬者とされる応神天皇は実在が濃厚な大王とされる。いわゆる河内王朝の始祖とみる説もある。
 
 宮内庁は陵墓指定された古墳について「御霊の安寧と静謐を守るため」として一般の立ち入りを禁止しており、学会側は05年に学術的に重要な陵墓11基を指定して要望。宮内庁は08年から許可を出し、これまで3回、計4基の陵墓・陵墓参考地への立ち入りが実施された。
 
 古代学研究会の今尾文昭・奈良県橿原考古学研究所総括研究員は「倭の五王の一人として有力な古墳を調査できる意義は大きい」とし、墳丘本体への立ち入りについても「粘り強く求めていきたい」と話している。宮内庁書陵部の福尾正彦・陵墓調査官は「安全の確保が確認できれば墳丘への許可も検討したい」としている。