主役なき平和賞式典

主役なき平和賞式典「私を最後の犠牲に」劉氏の文章代読 (www.asahi.com 2010年12月10日22時11分)
 
 ノーベル平和賞の授賞式が10日、ノルウェーの首都オスロの市庁舎であり、今年の受賞者で獄中の中国人民主化活動家、劉暁波(リウ・シアオポー)氏(54)が「言論を理由にした投獄の犠牲者は私を最後にして欲しい」と訴えていた文章が朗読された。中国政府が劉氏の家族を軟禁状態におき、賞を受け取る代理人もいない異例の式典となった。一方、ノーベル化学賞を受賞する日本の鈴木章氏(80)と根岸英一氏(75)は、スウェーデンストックホルムでの授賞式に臨んだ。
 
平和賞式典で代読された劉暁波氏の文章(抄訳)
 劉氏は、中国共産党による一党独裁の見直しや言論・宗教の自由を求めた「08憲章」を起草したことから、国家政権転覆扇動罪で懲役11年の実刑判決が今年2月に確定し、服役中。妻の劉霞(リウ・シア)さんも自宅軟禁が続いている。
 
 式典会場には、劉氏の巨大な写真と空席の受賞者席が設けられた。ノルウェーの女優リブ・ウルマンさんが、劉氏が昨年12月、自らの裁判審理で読み上げるために書いた「私には敵はいない」と題した陳述文を代読した。
 「6月4日(天安門事件)の犠牲者の魂はまだ慰められていない」と、基本的人権が制限された中国の現状に憂慮を表明。「国民誰もが平等に扱われ、恐れることなく政治的な意見を表明できる国になる日を望む」と結んだ。
 
 受取人がいない授賞式は、1935年、ナチス治世下で獄中にあったドイツの平和運動家オシエツキー氏(授賞式は36年)以来、74年ぶり。ノーベル賞委員会のヤーグラン委員長は「劉氏が獄中にあり家族も賞を受け取れない現実こそが、この賞が必要なことを示している」と述べた。