クーデターはなかったのか

海上保安官の逮捕見送り 任意で捜査継続 尖閣映像事件 (www.asahi.com 2010年11月16日3時15分)
 
 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で、警視庁と東京地検は15日、「自分が流出させた」と名乗り出た神戸海上保安部の男性海上保安官(43)について、国家公務員法守秘義務違反容疑での逮捕を見送る方針を決めた。
 
 捜査当局は、保安官の行為が守秘義務違反に当たるという見方は変えていない。同罪の法定刑は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」。今後は警視庁が任意での捜査を続け、送致を受けた東京地検は「在宅のままで起訴して刑事裁判にかける」「略式起訴して罰金刑」「起訴猶予」といった選択肢から判断する可能性が高い。
 
 東京地検はこの日、これまでの保安官の聴取状況や保安官の説明の裏付け結果などをもとに、上級官庁である東京高検、最高検と断続的に協議した。押収したパソコンの解析などを進める警視庁とも、捜査方針について協議した。
 その結果、保安官は自ら名乗り出て聴取に応じており、逃亡や自殺の恐れは少ないと判断した。神戸市内の自宅を捜索し、海上保安庁側からも必要な証拠品の提出を受けるなどして裏付け捜査がある程度進み、今後の証拠隠滅の可能性も低いとみた。
 
 これまでの聴取で、保安官は「映像はほぼ誰でも見られる状態だった」と説明している。これを受けて捜査当局が海保関係者に事情を聴いたところ、流出した映像は海保内部で広く閲覧、入手できたことがわかった。「秘密性」の度合いが当初の見方より薄れたことも、在宅で捜査を続ける理由の一つとみられる。
 捜査当局は、漁船衝突事件を起こしたとして逮捕した中国人船長を処分保留で釈放し、起訴しない見通しであることも考慮。一方で保安官を逮捕し、起訴に向けて調べるのはバランスを欠くという判断も働いたとみられる。
 
 ただ、検察と警視庁には「保安官は自ら出頭したのに供述があいまいで流出経路がはっきりしない。関係者をかばっている可能性がある」「流出後、映像が入った記憶媒体を壊して捨てるなど証拠隠滅もはかっている」などとして、逮捕して身柄を拘束し、強制的に取り調べるべきだという意見もあった。
 また、流出した映像がどれほどの秘密だったかは別にして、守秘義務違反の対象になることについては検察内部に異論は少ない。「個人が勝手に流出させることを許したら、公的な組織は成り立たなくなる」という意見もあったという。
 
 これまでの調べでは、9月7日の衝突の映像は石垣海上保安部(沖縄県石垣市)が撮影、編集した。海保の庁内ネットワークを通じて第11管区海上保安本部(那覇市)と東京の海保本庁に送られるとともに、11管から海上保安大学校広島県呉市)の共有フォルダー内に手違いで保存されたままになっていたという。
 これを見つけた巡視艇「うらなみ」乗組員が、船の共用パソコンに取り込み、保安官はそこから入手していた。