世界最古の木造建築

 先日、九州からの帰路、僅かな時間を縫って奈良に立ち寄り新薬師寺を拝観。夕方4時半は過ぎていたが、次に奈良を訪れる機会もいつか分からず、タクシーを拾って元興寺に走り、すでに五時前、閉められた門越しに拝観をお願いしてはみたが、けんもほろろに断られた。まことに由緒正しきお寺である。

現役木材、法隆寺より古かった 奈良・元興寺、世界最古 (www.asahi.com 2010年8月14日3時3分)
 
 奈良市中院町、元興寺(極楽坊)の禅室(国宝)に、飛鳥時代初期の586年ごろに伐採されたヒノキが使われていることが、総合地球環境学研究所京都市)の光谷拓実客員教授(年輪年代学)の調査でわかった。世界で最も古い木造建築とされる法隆寺(7世紀末〜8世紀)を約100年さかのぼり、世界最古の「現役」の木造建築部材になる。
 
 元興寺は国内初の仏教寺院・飛鳥寺法興寺奈良県明日香村)を前身とし、平城遷都(710年)に伴って平城京内に移された。奈良時代の718年に建立が始まり、建物は新築とされてきたが、少なくとも禅室は飛鳥寺からの移築だった可能性が高まった。
 
 禅室は東西26.8メートル、南北12.8メートル、高さ8.4メートルの細長い木造平屋建て。僧侶らの住居「僧坊」として使われ、後世には修行の場を兼ねた。
 
 光谷教授は奈良文化財研究所の発掘技術研究室長だった2000年、終戦前後の修理で禅室から取り外された部材の年輪を調査し、582年ごろの伐採を示す部材を見つけた。現在使われている部材にも同時代のものがあるとみて、07年にデジタルカメラで屋根裏の部材の年輪などを撮影。年代の判明している年輪データと比較して割り出す年輪年代法に基づき画像をコンピューター解析した。その結果、複数の柱の上部に水平方向に渡した「頭貫(かしらぬき)」で、最も外側の年輪が586年を示した。
 
 飛鳥寺の正確な建立年は不明で、590年に用材を伐採したことが日本書紀に記されている。飛鳥寺の部材が禅室に再利用されたとみられる。光谷教授は「国内初の寺院の部材がいまだに健在なのは、加工しやすく耐久性に優れたヒノキだったから。日本の木の文化を象徴する建物として、禅室は貴重だ」と話す。
 
 禅室の屋根裏は10月17日〜11月13日、1日160人の限定で公開される。申し込みは往復はがきで9月17日必着、先着順。詳しくは元興寺文化財研究所のホームページ(http://www.gangoji.or.jp/)で。
 
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 〈元興寺〉 蘇我馬子(?〜626)が飛鳥地方(奈良県明日香村)に創建した飛鳥寺を、奈良時代に北約22キロの平城京内に移した寺。東大寺などとともに南都七大寺のひとつに数えられる。室町時代に金堂などが焼失、江戸時代には五重塔観音堂などが焼けた。現在は、本堂と禅室からなる極楽坊と、観音堂の系譜を引く寺院の二つに分かれる。極楽坊は1998年、「古都奈良の文化財」のひとつとして世界遺産に登録された。