たくらみの作家

芥川賞赤染晶子さん、直木賞中島京子さん (www.asahi.com 2010年7月15日19時54分)
 
 第143回芥川賞直木賞日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞赤染晶子さん(35)の「乙女の密告」(新潮6月号)、直木賞中島京子さん(46)の「小さいおうち」(文芸春秋)が選ばれた。どちらも初めての候補入りでの受賞決定。副賞は各100万円。授賞式は8月20日午後6時から東京・丸の内の東京会館で。
 

芥川賞直木賞贈呈式 赤染さんと中島さんあいさつ (www.asahi.com 2010年8月30日)
 
 芥川賞選考委員の池澤夏樹さんは「赤染さんは考えて、たくらんで、工夫して書いている。読み手は楽しく軽快に読みながら、だんだんと『アンネの日記』をめぐる主題に向かって深く入っていく。演劇的に仕立ててあって、最後に僕はあっと驚かされました」と話した。
 
■「ユーモアも携え真剣に」赤染さん
 
 赤染さんは「アンネと同じ強制収容所にいて生き残った女性が、戦後、世界中から観光客が来るようになったアンネの隠れ家を訪問したとき『こんなことはアンネは望んでいなかった』と観光客用のノートに記していました。アンネは歴史の犠牲者です。その一方で、少女幻想のなかで現実とはかけ離れたかたちで語られてしまう。私はこれからもユーモアとともに文学に携わっていきますが、このことばを一生背負い、テーマや題材に対して自分自身を問いつめ、真剣に向き合っていこうと思います」と話した。