ゴールドマンの衝撃

ゴールドマン・ショックで株安・円高 東京市場に不安感 (www.asahi.com 2010年4月19日21時56分)
 
 19日の東京金融市場は、先週末に米国を代表する金融大手ゴールドマン・サックスが詐欺の疑いで提訴された「ゴールドマン・ショック」で、円高・株安になった。米国の景気回復を期待する市場だが、米金融業界の先行きに一抹の不安が漂った。
 
 主な企業の株価から算出している日経平均株価は、先週末より193円41銭(1.74%)安い1万0908円77銭で取引を終えた。終値が1万1000円を割り込んだのは、3月29日以来3週間ぶりだ。
 ゴールドマン提訴を受け、先週末に米ニューヨーク市場のダウ工業株平均が一時170ドルも下げた流れが東京市場に波及した。東京証券取引所第1部では、業種別にまとめた株価が33業種すべてで先週末より下がった。特に「米国の金融規制が強まる」との見方から銀行業が2.81%、保険業が2.78%下げた。
 日経平均は3月初めから上昇を続け、先週末までに約1カ月半で1割近く値を上げた。米国景気の回復期待からニューヨーク市場で株価が上昇していたことが大きい。
 
 ただ、大手証券の担当者からは「過熱している」との声もあった。株価上昇が速すぎるとの警戒感にゴールドマン提訴の懸念が加わった。大和証券キャピタル・マーケッツの西村由美シニアマーケットアナリストは「ゴールドマンの問題が金融全体にどう影響するのかが不透明。投資家には、この行方を見極めたいという心理が働いた」と指摘する。
 
 東京外国為替市場ではドルを売って円を買う動きが強まった。19日午後5時現在は先週末の同時点より82銭円高ドル安の1ドル=91円77〜80銭になった。1ドル=91円台は約3週間ぶりの円高水準だ。対ユーロでも同1円84銭円高ユーロ安の1ユーロ=123円50〜54銭だった。
 最近は、中国政府が通貨「人民元」のドルに対する価値を引き上げるとの観測が強まり、同じアジアの円も買われて円高傾向になっていた。そこへゴールドマン提訴で米金融業界への懸念が加わり、ドル売り円買いが加速した。
 市場では「(大手エネルギー企業の経営陣が粉飾決算で訴追された)エンロン事件を想起させる」(国内証券)との声もあり、提訴の行方が注目されている。
 
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 米証券取引委員会(SEC)が先週末、米金融大手ゴールドマン・サックスを詐欺の疑いで民事提訴した。ゴールドマンが2007年に発行した債務担保証券(CDO)を顧客に売った際、CDOの価格を下落させることで利益をあげようというヘッジファンドがあることを顧客に十分知らせていなかったという。SECはゴールドマンが不当に得た利益の返還と民事制裁金を科すよう求めている。
 日本では、今のところゴールドマン関連のCDOの取引で大きな損失が出たとしている金融機関はない。日本の金融当局は静観する構えだ。
 
 CDOは債券やローン債権などの資産を担保として発行される証券化商品。07年に深刻化した米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題で価格が急落した。